2009年02月11日

手話通訳者の手話は、音声対応手話?

愛の劇場 ラブレター

ブログを読んでくださっている方から、質問がありました。

「日本手話といっても、
超本格的日本手話もあれば、
音声言語に近い手話もありますよね。
通訳者の手話は、音声言語に近くなるみたい。
どうして?」exclamation&question

そのとおりです。

音声日本語を、手話通訳する場合には、
通訳者の手話は、音声言語寄りになります。
なぜなら、元の文体が、日本語音声だからです。

わかりやすく英語で説明してみましょう。
飛行機に乗る前の説明事項です。飛行機
○シートベルトを締めてください。
○非難具は、みなさんのシートの下にあります。
○快適な旅をお楽しみください。
このあと、英語では、最後によく、
サンキュウ(THANK YOU)で、締めくくられます。
この英語、
日本語にするとき、どうするのがいいでしょうか?

元の英語に沿って、この最後の一言を、
「ありがとうございます。」
と、訳す人も、多いでしょう。
そして、これは、なんといっても、立派な日本語。
きちんと、元の英語を、日本語に訳したものであり、
言葉の選び方も、まちがっていません。

でも、こうした説明書きの最後は、
本来のナチュラルな日本語では、少しニュアンスが違います。
日本語の文章では、物事の終わりは、
「よろしくお願いします。」
で、締めくくられることも多くみかけるかと思います。
いろんなお話を説明したら、最後は、
覚えてくださいね。よろしくね。という意味で、
「よろしくお願いします。」がつくのです。

ところが、この発想は、英語では、一般的なものではありません。
英語では、「よろしくお願いします。」と、
最後につける感覚は、ないのです。

そんな英語文を日本語に訳すとき、
どうしたらいいんだろう・・・

それでも、何とか、日本文を作り上げなければいけないなら、
英語の文化ごとそのまま訳する人は、「ありがとう。」
という日本語をつけ、
あくまで日本語文化に合わせ、
英語にはない、感覚も補って、日本語にしたいなら、
「よろしくお願いします。」
という言葉を選ぶかもしれません。

さあ、これのどちらが日本語でしょうか?
この問いには、
多くの人が、「両方とも日本語!」と答えるでしょう。
そうです。
英語文を訳したとき、
英語の感覚に近い日本語も、
徹底的に日本文化に従って、少しニュアンスを補った日本語も、
両方とも、間違いなく日本語!!
これは、どちらが正しいと決めることはできないのです。

言語通訳というものは、相手の言語の文化も汲んで、
自国文化にないものも、
何とかして意味を伝えなければいけません。ふらふら

今日、たまたま読んだ本に、
「忘年会」という言葉を、外国の人に伝えるには・・
ということを書いている、英語についての本がありました。
その方がおっしゃるには、
これは、やはり、一言で、
何かの英語の言葉に置き換えることはできないとのこと。
まずは、日本語の音声そのままで、
「ボウネンカイ」と伝え、
その後、
「これは、日本の習慣で、毎年年末になると、
『今年もがんばったね』と、お互いをねぎらうために
開くパーティーのことなんだ。
特に仕事仲間が集まって、飲み会をすることが多いね。」
これが、「ボウネンカイ・パーティー」さ。

と、言葉の定義から入らなければ、
伝えられないというのです。
だって、「ボウネンカイ」という英語は存在しないから・・・
つまり、たとえ、英語で話すときでも、
日本の「ボウネンカイ」について話すとき、
頭の中の発想は、
「日本寄り」ということになるわけですね。笑

わかりやすく英語に置き換えてお話しましたが、
音声日本語で話された言葉を、
手話に置き換えるときも、同様のことが起きます。
だから、一見、通訳者の手話は、
どんなにうまくても、日本語から手話を作るときには、
音声言語に近くなってしまう傾向があるのです。
これは、とても自然なこと。

では、
どうやれば、日本語から切り離された、
本来のナチュラルな日本手話を話すことができるのか・・・

それはまた今度にしますね。
だって、なんか・・・
すごく長くなっちゃった。
読んでいただいて、とってもありがとう!!キスマーク

ちなみに、ラブレターの翻訳も、
こういった難問が、次々に降りかかりつつ、
がんばってきたよ。笑
手話って、奥が深いですね。揺れるハート
posted by 南 瑠霞 at 23:34| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 「ラブレター」ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
記事にしていただいてありがとうございます!!!
しかし本当に奥が深い・・・(@@)
深く内容の濃い記事で!
何度もじっくり読みたいと思います><
今度の記事も楽しみです!
Posted by YUMI at 2009年02月12日 12:30
YUMIさん、
う!! うれしいっ!!
読んでくださったんですね。
大感激です〜〜〜〜〜〜!!!
ようするに、元の文が、
英語なら、
日本語に翻訳しても英語のニュアンスが残る。
音声日本語を、手話に訳しても、
日本語の、片鱗が入ってしまう。
ってことで、
翻訳は、元の言語に、
根っこを握られている!!
ということになるかと思います。
これは、言語通訳の基本であり、
自然なことなんですね。

長い説明、読んでくださって、
本当にありがとう!!
続きはまた今度ね。
よろしくお願いします。
あ、いや、サンキュー!!笑
Posted by 南瑠霞本人 at 2009年02月12日 13:09
なるほど〜〜〜!
手話も英語も日本語も、みんな文化が違うと言葉だけでは片付かないことがあるのですね!
そう考えると翻訳ってホント、大変ですね〜(^−^)
Posted by YUMI at 2009年02月12日 19:10
YUMIさん、そうなんです。

だから、日本語を英語に訳すと、
日本語ちっくな英語になり、
英語を日本語に訳すと、
英語ちっくな日本語になり、
音声日本語を手話に訳すと、
音声日本語ちっくな手話になり、
逆に、手話を日本語にすると、
手話ちっくな日本語になります。笑

これは、通訳界では、
ごく一般的なお話。

だから、通訳者の手話が、
音声対応的なのではなく、
音声日本語を手話で訳すと、
音声日本語的手話になる
傾向があるのです〜。

本当に、一生懸命考えてくださって、
うれしいです。
では、また〜〜〜!!
Posted by 南瑠霞本人 at 2009年02月12日 22:08
私もじっくり読んでしまいました。

私も以前に英語の翻訳の仕事をしていたので、すごくよくわかりました。上司から英訳を頼まれると、どんな短い文章でも必ず「宜しくお願いします」て書いてあるんですよね。私の場合はthankyouとも書かず独断でカットしていました(笑)

だから、難しい話を同時通訳をする人って本当にすごいと思うんです。知り合いにもいるのですが、いたこがのりうつったみたいなんですよ。近くでみてると、友達になりたくない、みたいな(笑)

手話も同じなのですね。
日本手話と音声対応手話、とても奥が深いですね。。。とても勉強になりましたし、これからも勉強が必要だと思いました。
Posted by 秦野の高田です at 2009年02月14日 02:11
秦野の高田さん〜〜!!
さすが、英語の通訳の方のお話は、
説得力っ!!
日本語の「よろしくお願いします。」は、
英語泣かせですぅ・・涙

手話もおんなじ。
音声日本語とは感覚が違うから、
聞こえる人が聞こえる感覚で
声でしゃべった言葉は、
手話に翻訳しても、
聞こえる感覚の文章であり、
ろう者的発想の文章には
なりづらいのです。
だから、一見、手話通訳者が
音声を聞いて、手話通訳すると、
『日本語的な手話』に、
見えてしまうケースが、多いのですね。

同様に、頭で、日本語で物事を考えてから、
それを、英語に直してしゃべっても、
ナチュラルな英語になりづらいし、
おなじく、音声日本語の発想を、
頭の中で作り、そのあと手話にしても、
日本語的手話にしかなりません。

第2言語で、ネイティブになりたいなら、
母語のシステムを一切使わない!!
これ、語学の鉄則ですね。笑
Posted by 南瑠霞本人 at 2009年02月14日 09:57

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