ドラマ手話指導の方法
愛の劇場 ラブレター
「ラブレター、見ました。
役者さんたちは、手話がうまかったけど、
どうやって勉強したんですか?」
いくつか問い合わせをいただきました。
本当に、ありがとうございます。
今日は、ラブレターを卒業する前に、
この、ドラマの手話指導の方法について、
皆さんにお伝えしましょう。
わたしたちの手話のレッスン法は、少し変わっています。
最初から、脚本を見ながら、
手話をお伝えするわけではありません。
どんなに、出番の少ない方でも、
最初に必ず、2時間くらい、
聞こえないネイティブサイナー
(手話で日常を送っているろう者)に
会う時間を作っていただいています。
全くの初心者の方が、
はじめから、一切通訳無しで、身振り手振りで、
聞こえない人とお話をするのです。
くだらない冗談も交え、楽しくお話ししながら、
聞こえない人には、どうやれば通じるのか、
手話ってどんなものなのかを、
生のご自分の感性で、体感していただくことが目的です。
もちろん、その時、会話に出てきた、
お名前や住所、趣味などについての手話も、
その方に合わせて、覚えていただいています。
このことは、たぶん役者さんみんなの心の、
手話に対する思いのベースとなってくれたのではないかと、
思っています。
このレッスンを受けた方は、みなさん、
ろうのスタッフとも、心で接してくれ、
ドラマの中だけでなく、本当に、
現場のあちこちで、一緒に話そうという気持ちを
持ってくださっていたと感じます。
実は、このレッスン、ほとんどの演出スタッフ、
また、
ブラP(笑)や、大ボスのプロデューサーKさんも、
ちゃんと受けてくださいました。
ブラPにいたっては、最初は自分、
そのあと、4~5回、いろんな役者さんに付き合って、
何度もこのレッスンを受けました。笑
(このドラマは、ブラPなしには存在せず、
彼女こそが、本当に、
手話とこのドラマを愛してくれていたんでしょうね。)
(3人の美波たちが、何度も手を振り泣いた
連絡フェリー「ひなせ」)
さて、
その第1段階を経て、役者さんたちには、
次にようやく手話の翻訳をお伝えし、
覚えていただくことになります。
その時は、台本にある日本語が、
どんな手話単語で、どういう語順で、
どのような表現になって、作られているかも、
すべて説明させていただき、お伝えします。
最初は、その説明だけで、脚本1冊につき、
一人の役者さんで、2時間から4時間費やされます。
その後、わたしたちが、準備した、
翻訳のビデオ(DVD)が渡されます。
これは、ほぼ、台本の説明と同じ内容になりますが、
ご本人によって、やりやすい表現、
理解しにくい部分などが違いますから、
このDVDだけを渡しても、
役者さんの手話は、よいものにはなりません。
このDVDがあるからと言って、
翻訳説明の時間が省略されることは、一切ありません。
その説明を理解した上で、
復習として、その手話の動画DVDを、
使ってはじめて、役者さんたちは、
手話の生きた意味を、
つかむことができるようになるのです。
その段階を踏んだ方たちだけが、
DVDを家に持って帰り、
自分で復習することになります。
夜中、このDVDを何度も何度も見て、
知らない間に眠ってしまっていた・・
なんていう役者さんたちもいましたよ。笑
これが、役者さんたちがみんな言っている、
「手話のビデオ(DVD)」と
呼ばれているものの正体です。笑
その後は、お一人お一人が、うまく覚えられたかどうか、
チェックのレッスンが、
ばっちり1発でOKの方は、
脚本1冊につき、2~3時間。
ダメなら出来るまで、一緒にがんばります。笑
声付きの手話で大変なのは、音声と手話単語の語数が、
合わないこと。
手のタイミングと、声のタイミング、
そして演技の間合いのタイミングを、
すべて一致させることに皆さん苦労されていたようです。
3人の美波たちは、それとは文法の違う、
ろう者のナチュラルな、手話を目指しました。
この場合、口の動かし方も違うルールがあります。
「行く」という手話をしながら、
口で「ぱ」または「た」というと、
「行った」という過去形。
口で「う」というと、現在形または未来形の
「行く」の意味になります。
そのほか、語順もいろいろ違ったりしますし、
同じ単語が並んでいても、
それを表現する位置や区切り方で
意味が全く逆転してしまったりするので、
そこのところを、本番までずっと一緒に付き添って、
間違えないように、練習していきました。
また、ここまでいろいろ、
手に神経を使って動かすとなると、
役者さん達の本来の演技がぎこちなくなる
心配もあります。
立って歩くシーンは、実際に立って歩き、
相手が、右隣にいるときと左隣りにいる時では、
手話を向ける方向も変わってしまうので、
左右両方練習したりと、
本番までにやれることは、出来るだけ、
一緒に考えて練習していきました。
(船が桟橋を離れ、小豆島の港をのぞむ風景)
そして、ようやく本番!!
ここからは、全て役者さんのもの。
何より、皆さんが、手話のセリフで演じたい。
いいものを作りたいと願ってくださり、
そう行動してくださったから、
良い手話、良い演技をしてくださったのだと思います。
役者さんたちの情熱無くしては、
乗り越えられなかった半年。
おひとりおひとりが
「手話を完全に自分のものにして、セリフとして話したい」と
思ったからこそ、
皆さん、上手に手話をしてくださったのだと思います。
これが、役者さんたちの、
手話の舞台裏です。
役者の皆さん、
そして、多くのスタッフの皆さん。
皆さんが、手話に興味を持ち、
本気でかかわってくださったからこそ、
あの画面から、素敵な手話のせりふが、
視聴者のみなさんの元に届いたんですね。
私たちも、そんな皆さんとかかわらせていただき、
本当に、感謝しています。
ラブレターノート、最終回まで、
あと、3回。
楽しく書いていきますので、
どうぞよろしくお願いします。
「ラブレター、見ました。
役者さんたちは、手話がうまかったけど、
どうやって勉強したんですか?」
いくつか問い合わせをいただきました。
本当に、ありがとうございます。
今日は、ラブレターを卒業する前に、
この、ドラマの手話指導の方法について、
皆さんにお伝えしましょう。
わたしたちの手話のレッスン法は、少し変わっています。
最初から、脚本を見ながら、
手話をお伝えするわけではありません。
どんなに、出番の少ない方でも、
最初に必ず、2時間くらい、
聞こえないネイティブサイナー
(手話で日常を送っているろう者)に
会う時間を作っていただいています。
全くの初心者の方が、
はじめから、一切通訳無しで、身振り手振りで、
聞こえない人とお話をするのです。
くだらない冗談も交え、楽しくお話ししながら、
聞こえない人には、どうやれば通じるのか、
手話ってどんなものなのかを、
生のご自分の感性で、体感していただくことが目的です。
もちろん、その時、会話に出てきた、
お名前や住所、趣味などについての手話も、
その方に合わせて、覚えていただいています。
このことは、たぶん役者さんみんなの心の、
手話に対する思いのベースとなってくれたのではないかと、
思っています。
このレッスンを受けた方は、みなさん、
ろうのスタッフとも、心で接してくれ、
ドラマの中だけでなく、本当に、
現場のあちこちで、一緒に話そうという気持ちを
持ってくださっていたと感じます。
実は、このレッスン、ほとんどの演出スタッフ、
また、
ブラP(笑)や、大ボスのプロデューサーKさんも、
ちゃんと受けてくださいました。
ブラPにいたっては、最初は自分、
そのあと、4~5回、いろんな役者さんに付き合って、
何度もこのレッスンを受けました。笑
(このドラマは、ブラPなしには存在せず、
彼女こそが、本当に、
手話とこのドラマを愛してくれていたんでしょうね。)
(3人の美波たちが、何度も手を振り泣いた
連絡フェリー「ひなせ」)
さて、
その第1段階を経て、役者さんたちには、
次にようやく手話の翻訳をお伝えし、
覚えていただくことになります。
その時は、台本にある日本語が、
どんな手話単語で、どういう語順で、
どのような表現になって、作られているかも、
すべて説明させていただき、お伝えします。
最初は、その説明だけで、脚本1冊につき、
一人の役者さんで、2時間から4時間費やされます。
その後、わたしたちが、準備した、
翻訳のビデオ(DVD)が渡されます。
これは、ほぼ、台本の説明と同じ内容になりますが、
ご本人によって、やりやすい表現、
理解しにくい部分などが違いますから、
このDVDだけを渡しても、
役者さんの手話は、よいものにはなりません。
このDVDがあるからと言って、
翻訳説明の時間が省略されることは、一切ありません。
その説明を理解した上で、
復習として、その手話の動画DVDを、
使ってはじめて、役者さんたちは、
手話の生きた意味を、
つかむことができるようになるのです。
その段階を踏んだ方たちだけが、
DVDを家に持って帰り、
自分で復習することになります。
夜中、このDVDを何度も何度も見て、
知らない間に眠ってしまっていた・・
なんていう役者さんたちもいましたよ。笑
これが、役者さんたちがみんな言っている、
「手話のビデオ(DVD)」と
呼ばれているものの正体です。笑
その後は、お一人お一人が、うまく覚えられたかどうか、
チェックのレッスンが、
ばっちり1発でOKの方は、
脚本1冊につき、2~3時間。
ダメなら出来るまで、一緒にがんばります。笑
声付きの手話で大変なのは、音声と手話単語の語数が、
合わないこと。
手のタイミングと、声のタイミング、
そして演技の間合いのタイミングを、
すべて一致させることに皆さん苦労されていたようです。
3人の美波たちは、それとは文法の違う、
ろう者のナチュラルな、手話を目指しました。
この場合、口の動かし方も違うルールがあります。
「行く」という手話をしながら、
口で「ぱ」または「た」というと、
「行った」という過去形。
口で「う」というと、現在形または未来形の
「行く」の意味になります。
そのほか、語順もいろいろ違ったりしますし、
同じ単語が並んでいても、
それを表現する位置や区切り方で
意味が全く逆転してしまったりするので、
そこのところを、本番までずっと一緒に付き添って、
間違えないように、練習していきました。
また、ここまでいろいろ、
手に神経を使って動かすとなると、
役者さん達の本来の演技がぎこちなくなる
心配もあります。
立って歩くシーンは、実際に立って歩き、
相手が、右隣にいるときと左隣りにいる時では、
手話を向ける方向も変わってしまうので、
左右両方練習したりと、
本番までにやれることは、出来るだけ、
一緒に考えて練習していきました。
(船が桟橋を離れ、小豆島の港をのぞむ風景)
そして、ようやく本番!!
ここからは、全て役者さんのもの。
何より、皆さんが、手話のセリフで演じたい。
いいものを作りたいと願ってくださり、
そう行動してくださったから、
良い手話、良い演技をしてくださったのだと思います。
役者さんたちの情熱無くしては、
乗り越えられなかった半年。
おひとりおひとりが
「手話を完全に自分のものにして、セリフとして話したい」と
思ったからこそ、
皆さん、上手に手話をしてくださったのだと思います。
これが、役者さんたちの、
手話の舞台裏です。
役者の皆さん、
そして、多くのスタッフの皆さん。
皆さんが、手話に興味を持ち、
本気でかかわってくださったからこそ、
あの画面から、素敵な手話のせりふが、
視聴者のみなさんの元に届いたんですね。
私たちも、そんな皆さんとかかわらせていただき、
本当に、感謝しています。
ラブレターノート、最終回まで、
あと、3回。
楽しく書いていきますので、
どうぞよろしくお願いします。
この記事へのコメント
なるほどー!
「ぱ」で過去形
「う」で現在形、未来形
みたいな話がなかなか聞けなくて、
とてもためになりました。
あとは語順とか文法の話。
本でもなかなかないですよね。
いや、私が見つけられないだけかな?
あったら知りたいです。。。
うーん。
こういうのを学びたいです!
ありがとうございます!
口の動きとか大変そうですね・・・
みなさん本当にお疲れ様でしたっていう感じですね^^;;
るるかさんも本当にお疲れ様でした!!
数時間かけて「『ラブレター』ノート」、
拝見させて頂きました。
井澤勇貴くん。
聾者の澄枝さんと通訳なしで、
話せるまでに上達したとの文章を読んで、
役者魂だなと驚かされました。
海司のガサツさとは裏腹に、
手話ど素人の私が見ても、
陸の繊細さがよく出ていた手話だったと思います。
中高時代でも数ある大好きなシーンの中で、
第15話の学校での屋上で、
「僕なら、迷惑って思わないよ。
僕がこれから、美波の耳になる」
この前後のセリフの手話を、
“静”という言葉が当てはまりそうな、
タンタンとした井澤くんの手話が印象的でした。
私は海司より陸派なので、
どうしても陸を主として見てしまうんですが、
坂本爽さんの手の動き。
あまりの綺麗さに、見入ってしまったほどです。
坂本さんも井澤くんと同じく、
澄枝さんと通訳なしで手話で会話されたとの記事を読み、
さらに驚きました。
ドラマへの熱意を感じました。
実は日本ドラマに飽きて、
6年ほど前の高校3年の頃から、
韓国ドラマばかり見てたんです。
日本にも素敵なドラマがあるということ、
再確認できた作品だったと思います。
あまりにハマり、
自分のブログに好きなシーンを集めたページ、
作ってしまうほどのドラマの世界に、
どっぷり入り込みました。
韓国ドラマばかり見ていたので、
韓国のドラマ事情を知った時は驚きました。
撮影当日に台本が配られ、
短時間で大量のセリフを覚えないといけない。
一週間の合計睡眠時間は、
数時間だということ。
台本は直前に書き換えられることも多々あり、
放送数分前、
放送が始まっている最中にお隣で編集と、
とても慌ただしいと聞きました。
日本ドラマはまさか、
そんなことはあるはずないと思っていましたが、
『ラブレター』の撮影も、
韓国の撮影事情に近いものを感じました。
予想以上にバタバタされてたようですね!!
視聴者の私には、知る由もありませんでした。
「30時半」、
このような言葉すら耳にしたことがありません。
大変だったんですね。
皆さんの頑張りがあったからこそ、
あのような素敵な作品に仕上がったんだと、
123通の「『ラブレター』ノート」を拝見し、
知ることができました。
ありがとうございました。
では、また伺います!!
そうですよね。
私も何気なく使っていた日本手話。
教える段になって、初めて、
真剣に、何が違うのか考えました。笑
口の使い方などは、聞こえないモデルを
丸覚えするのが一番。笑
区切り方や、表情による文法と言えば・・・
たとえば・・・
「私」「あなた」「好き」
この語順を入れ替えずに、
「私は、あなたが好き。」
「私のことを、あなたが好き。」
両方やってみてね。
あの・・・答えは、
地元の手話仲間と相談してね。笑
そうなんです。
仕込みは長く、放送は、一瞬!!笑
本当に、応援ありがとうございました。
私に負けない長文!?
と思って、読ませていただいたら、
本当に、熱いコメント!!
とても、ありがとうございます。
本当に、
ドラマを愛して見てくださっていたんですね。
もしかしたら、
手話ドラマは、
言葉の持つストレートな感じとか、
純粋な感じが、
一般の日本のドラマより、
韓国ドラマに近いものが
あったかもしれません。
ムーミンさんのブログの、
ラブレター名場面集?
ぜひ、拝見したいけど、
アドレス教えていただけませんか?
ムーミンさん、
本当に、このブログ、見てくださって、
ありがとう。
とてもうれしいです。
あまり意識しないかもですね^^;
「私」「あなた」「好き」
の手話の語順入れ替えずにですか!?
や、やってみます!!!
ありがとうございます!!!
はい、ぜひ、地元のみんなとやってみてね。
とってもありがとう~~。
YUMIでした!
ありがとうございます~~~~!!