森の風

2013年春、花と緑の風の中に出て、
カメラに目を向けてみた。
新しい決意、強くなるという思い、
空に、雲に、木々に向かって、
この手で話しかけた。
草と木と水と風が、一緒に、歌を歌ってくれた。



①小横森の約束2.jpg
(C)手話あいらんど / Photo by Hatsushi Miyako 


森は好きである。
澄んだ空気がひんやりして、鳥たちの声がするのがいい。
幼いころ暮らした、瀬戸内海の島の、
古鷹山(ふるたかやま)を思い出す。
頂上までの道を、父と競争しながら登った。
山のてっぺんから、本土の造船所や、行きかう車が見えて、
海の向こうは、島よりずっと都会で、
大人たちの別世界だと、感じたのを覚えている。
船に乗って、本土へ行くときは、
いつも、とっておきのワンピースを着て、
赤い靴をはいて出かけた。
船が港を離れるとき、島の山の頂上が見えて、
見送られているような気がした。
疲れて「抱っこ」とせがんだ父との思い出が、
葉を揺らす風と共に、森に眠っている。

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