ろう者にとっての運転免許

今週、古くからの知り合いである、
ろう者の男性に、会いました。
ちょっと嬉しい話を聞きました。

くるま.png

60歳近いこの方は、50歳を過ぎてから、
運転免許を取ったのだそうです。
年を取って、突然趣味に目覚めたわけでも、
必要に迫られたわけでもありません。

彼は、長い間、法律によって、
車の運転免許が取れなかったのです。

かつて、ろうの人の車の免許取得には、条件があり、
補聴器をつけて、
10メートル後ろから鳴らすクラクションの音が聞こえる場合のみ、
その資格が与えられていました。

ろう者のうちの、半数くらいは、
補聴器でクラクションの音が聞こえ、
そうした人の多くは、免許を取り、
私も、かつて、ろうの友人の運転する車の助手席に乗って、
いろんなところにドライブに連れて行ってもらったりしました。

一方、このクラクションの音がわからないという、
完全に、まったく耳の聴こえない人もいるわけで、
そういう ろうの人は、法律が改正されるまで、
運転免許を持つ資格がありませんでした。
私の知り合いも、その一人でした。

この運転免許に関する法律が、変わったのが平成16年だそうで、
それ以降、補聴器をつけなくても、
車の前の鏡を、ワイドミラーにして、
自分がろう者であることを示す、チョウのマークを付ければ、
運転免許が取れることになったのです。

ちょうちょ.png

この法改正の時点で、彼は、すでに50歳を超えていました。
でも、彼は、それをきっかけに、自動車学校に通い、
晴れて、マニュアルの車の運転免許を取ったのです。
(ちなみに私は、オートマの資格しか持っていません。笑)

それまで彼は、若いころからずっと運転免許を取りたくて、
何度も耳の検査に通っていました。
でも、どんなに検査を受けなおしても、
やっぱり、クラクションの音が聴こえず、
どうしても、自動車学校に通う許可が下りませんでした。
30歳になっても40歳になっても、
彼はいつも、誰かの助手席に座り、
どんなに運転したくても、その資格がなく、
多くの友達は、自分の彼女を車に乗せて、ドライブに行くのに、
自分だけは、家族を車に乗せてあげることもできなかったのです。

彼は、ずっと長い間、免許を持っている人たちのことを、
うらやましく思い、
ずっと、きっといつかは・・・と願い続けてきました。

そして、やってきたのが平成16年。
法律が変わり、
少し仕事や、ろう運動が落ち着いて、
時間が取れたとき、
彼は、はじめて、自動車学校の門をくぐりました。
若い人のようにはいかず、
何度も、授業や試験をやり直したものの、
晴れて、51歳で免許取得。
その時のうれしさは、忘れられない!と言います。
彼は、この夏も、田舎の東北に帰り、
現地でレンタカーをして、
家族や兄弟を乗せてドライブしてきたのだそうです。

ろう者でも、運転免許が取れる!!
奥さんや子供たちを乗せて、車で道を走ることができる!!
自分が運転して、ほかの誰かが助手席にいる!!
それは、彼にとって、なんと誇らしく、
喜びに満ち、うれしい時間でしょうか。
長年、くやしく、さびしく、我慢し続けた夢がかなった瞬間を、
彼も、家族も、ずっと忘れることはないでしょう。

そして、だからこそ!!
彼は、やっぱり「運転免許を取るならマニュアル!!」だと考え、
あえて、少し難しく、授業に時間のかかる、マニュアル車の教習を受け、
免許もマニュアル車で挑戦したのだそうです。
車が大好きな少年のころの夢が、50歳にしてかなった!!
彼は、この話をしながら、
顔が、まさに少年のように、輝いていました。

また、さらに、この時期、
同じ自動車学校には、
70歳のろうのおじいちゃんもいたそうで、
やはり、同じように、全く耳が聴こえず、
それまで取れなかった免許が、取れると聞いて、
子供のころの夢をかなえるため、
教習を受けに来ていたのだとか。
その方も、その後、見事 免許を取得され、
友人は、自分よりすごい人がいるものだと、
感心したと、話してくれました。

50年の夢をかなえた、ろう者の友人。
70年の願いを手にした、ろうのおじいちゃん。
長い道のりと、喜びの詰まった話を聞いて、
ものすごくうれしい気持ちになりました。

本当に、免許が取れて、良かったね。

この記事へのコメント

suechan
2014年08月20日 03:47
そうなんですね♪…私は…正直、耳の不自由な方がいつから!?どうやって自動車の免許を取得しているのだろうか!?と思っていました(・_・)…私は飲食店で働いていて…ご家族全員…耳の不自由な方がいらして、お父さんが車を運転してご来店されているので…法律が変わって10年あまり…20歳前後であろう息子さんが10歳の頃~でしょうか!?…きっと♪当時のお父さんは♪…その70歳位になる!?おじちゃんと同じように?嬉しかったでしょうね~ヽ(^○^)ノ…別に、誰かのお世話になる事を悲観する事はナイ!!と思うけど…そんなの耳が聞こえるとか聞こえないとか!!関係ナイし!
σ(*´∀`*)なんか…いっつも!!誰かに助けてもらってばっかりだし┐( ̄ヘ ̄)┌
だけど!!やりたい事が出来ないっっ…てのは…悔しい(≧口≦)ノですからね!!
理解力のナイ人は…耳の不自由な方が車の運転!?大丈夫なのかしらね!?…とか言ったりするけど!………よっぽどあなた(*・・)σの運転より…安心なんじゃないんですかぁ~(* ̄ー ̄)と 心の中でつぶやくσ(*´∀`*)だったりしてました♪
だって♪いっつも♪…そのご家族は美味しそうに♪楽しそうに食事して♪お帰りになりますから~ヽ(^○^)ノ
お父さんの免許証は♪家族で♪何処にでも行かれる♪大切な宝物なんだろうなぁ~…なんて勝手に思うのです♪……でも普通の事なんでしょうね♪
ちなみに!!(σ*´∀`)はオートマ限定ではありませんが…もう…オートマ車しか乗りこなせません(笑)
南 瑠霞本人
2014年08月21日 01:59
suechan ろうの方が、お店に見えて、
うれしいですね。

その方が、どのタイプの免許なのか、
わからないので、何とも言えませんが、
家族を乗せて、運転できる喜びは、
私達にとってもろうの方にとっても同じ。
安全に、便利に、楽しく、
乗りたいですね。

本当に、いつもありがとうございます。
きゃぶ
2014年08月24日 14:46

ろう者に限りませんが、
「運転できる」というのは
高齢者にとって「生きる張り合い」になることが
大きいんですよねー。

駅まで誰それを迎えに行ける、
女房の買い物に付き合える、
孫たちから尊敬される……

だから80歳90歳になっても
免許返上したがらない人が多い……

現実には爺さんたちの事故が絶えませんが……(^_^;)

どうしたもんですかねー……
南 瑠霞本人
2014年08月26日 16:37
きゃぶさん、なるほど、
誰かの力になれるって、
やっぱり、大事なことなんですね。
そういう気持ち、大事にして、
生きていきたいです。
ありがとうございます。

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