手話を学ぶ時、ろう運動に付き合わされるのはどうかと思う?

聴者が手話を学ぶ時、ろう運動に付き合わされるのはどうかと思う!

手話の勉強を始めた、
とある方に言われた言葉です。

その方によると、
地域の手話講座に行くと、
必ず、地元のろう者協会の行事に出るように言われたり、
いろんな法律を変えるための集会にも行くよう
声をかけられたりするのが、
違和感があり、嫌だと思うのだそうです。

手話は勉強したいし、
ろうの人とも友達になりたいが、
政治的なことなどは、それに関係がないというのです。

確かにその方の言われることは、
わかるような気もしますが、
私は、ちょっと違います。

例えば、
車いすの友達が、ホテルに泊まりづらいと感じた人が、
ホテルの人に掛け合って、
入り口にスロープを付けた。
そして、その現状を、世の中の人に訴えた。
それは、のちに、
ビル建築のバリアフリーの発想に取り入れられ、
世の中全体が変わった。

目の悪い人が、町に出かけやすくするため、
歩道に点字ブロックを増やし、
信号に音声を付ける運動をしたら、
だんだん、ろういった設備を整えたいと思う人が増えた。

電車やバスの案内放送がわからないと思った聴こえない人が、
文字で案内を付けてほしいと、長い間働きかけ続けたら、
新車導入の時、システムが変わり、字幕情報が増え、
結果として、
実は、騒音で聴こえる人にも聞き取りづらかった情報が、
多くの人に便利に伝えられるようになった・・・

などなど・・・・
これらは、全て、当事者とその周りの友人・家族たちが、
コツコツと、多くの人に伝え続けてきた結果、
もたらされた、社会の変化です。

また、こうしたことは、
そういう思いを持った人が、
情熱を持って、情報を発信し続けてこそ、
なしえるものでもあります。

一方、私達は、
隣りの人が、荷物が重くて困っていたら、
さっと、近寄って、一緒に持ってあげたり、
風邪で寝込んだ友達に、
ちょこっと家まで、おかゆを持って行ってあげたりと、
友人同士でも、
助け合うことはよくあります。

私達は、多くの場面で、
まわりの人と一緒に、助けたり助けてもらったり、
お互いさまとして、
様々な場面をシェアし合って生きています。

そう考えてみると、
手話を学び始めて、知り合いになったろうの人が、
困っていることを一緒に考えてみることも、
自然のような気がします。
特に手話は、少数派言語で、
ここまでの歴史の中で、
多くの誤解や偏見を持たれてきた経緯もあります。
その誤解を解くためにも、
学ぶ人に、共に考えてほしいと願うのは、
ろう者にとっては大切な気持ちのように思います。

私が大学に入る、少し前、
ろう者がそれまで取れなかった免許が取れるようになりました。
私はのちに、その法改正で免許を取った、
多くのろう者の友人の助手席に、乗せてもらい、
よく一緒にドライブに出かけました。
その少し前、民法の改正があり、
それまで、住宅ローンを組めなかったろう者が、
自分で契約できるようになり、
それで堂々と家を建てた、
ろう者のご家族の家にも招いてもらい、
いろんなごちそうをいただいたりしたこともあります。

実は、そうしたことも、
当事者であるろう者や、その周りの通訳者、
手話を勉強中の多くの方が、
社会に働きかけ、戦った結果得られたものであり、
それによって、世の中は変わり、
ろう者も、どんどん一般の人と対等になり、
私は、そうしたろう者の友人や、
おじちゃんおばちゃんにお世話になり、
手話を学び、
豊かな人生をもらいました。

こうしたことを、
手話を学ぶ人が一緒に考えなければ、
社会は変わったかどうかわからないし、
そうしたことを、一緒に戦った手話学習者の活動は、
なかったほうがよかったのか?
と言われれば、私にとっては、否!
これらの歴史は、多くの人たちの思いが集まって、
成し遂げられたことばかりであり、
困った事を、みんなで一緒に考えて、
解決した結果そのもの。
すごく良かった!!としか、
言いようがありません。

手話を学ぶ時、ろう運動に付き合わされるのはどうかと思う!
という発言を聞いた時、
私はちょっと、戸惑いました。

友人が困っていたら、一緒に考える。
それは、悩みの中心が、
相手にある場合も、自分にある場合だってある。
必要なら、助け合おう。
そう思う心が発展してこその、ろう運動だと、
私は実感しています。
ここまで、たくさんの法律や、
社会を変えてきたろう運動は、
貴重で大切なもの。
また、私達に、
悩みがあっても、みんなの力で、
一緒に乗り越えていけばいいのだと、
教えてくれている、
最高の教科書でもあると、感じます。

手話を学んでいるあなたも、
あれ?不思議だな、
これって、世の中おかしくないか?
そう思ったら、周りの人とぜひ、
いろいろお話してみてください。
一人の疑問が、みんなの疑問になり、
みんなが力を合わせれば、変えられることは、
たくさんあると思います。
そうやって、世の中が変わっていくことは、
とても素敵なことだと思います。

そんなわけで、
私は、ろう運動は必要で大切なものだと思っています。
一緒に考えていきましょう。

今日も長々、
ブログを読んでくださって、
ありがとうございます。

夜タワー.png
2015年2月28日・3月1日は、東京都耳の日記念文化祭でした。
http://minamiruruka.seesaa.net/article/414831553.html