ろう者カップルの結婚式・披露宴~情報保障の工夫③

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(Photo by Hatsushi Miyako)

先日、ろう者カップルの結婚式・披露宴の、
お手伝いをさせていただき、
音声と手話付の司会をさせていただきました。

私が担当させていただいたのは、
披露宴の司会ですが、
手話通訳者の方には、それより前の、
チャペルでの式の通訳もしていただきました。

この時、多くのカップルが、
依頼し忘れてしまうのは、
式が始まる前に、
すでにたくさんの通訳が必要だという点です。

例えば、式が12時に始まるとしたら、
それより、2時間くらい前から、着付けが始まりますし、
1時間前には、親族紹介や式のリハーサルもあります。
通訳者は、自分たちの当日の段取りの打ち合わせも含め、
10時半か11時には呼ばれていなければ、
大事な場面で、通訳者がいないことになってしまいます。

今回も、式の開始30分前から、
新郎新婦の式のリハーサルが行われ、
その間に同時に、別の部屋で、
親族紹介やあいさつが行われました。
この場合、同時に2つのことが進行しますので、
通訳者の方にも、
チャペルのリハーサルに2人体制で入ってもらったほか、
親族紹介の部屋にも、別のお二人に入っていただき、
通訳をしていただきました。

こうした通訳の配置を忘れてしまうと、
必要な場面での情報保障が漏れてしまうことがあるので、
事前にチェックしておきたいですね。

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さて、チャペルでの、お式では、
どういう通訳が必要かというと・・・

およそ20分の式の間に 
2人の通訳者がいることが理想です。

一人は、祭壇の神父様の横で、
ろう者の新郎新婦に向かって、
通訳を行います。

今回、もう一人は、祭壇の低い位置に立ち、
二人の式を見守るお客様たちに向かって
通訳をしてくださいました。

きのうに引き続き、ここでも、
通訳者の一人は、祭壇のど真ん中、神父様の横、
もう一人も、祭壇の片隅に立つ形となり、
失礼なのではないかと、
思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、ここも、ろうの方に見えない通訳は、
スイッチの入っていないマイクと同じ。
神父様の言葉を、ろう者カップルとご来場の皆さんに、
適切に伝えるには、この位置が適当ということになります。

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こうした内容は、
当日派遣された通訳者が、当日関係者に現場で説明し、
式場スタッフや、神父様の許可を得ていると、
時間がかかってしまいます。
事前に、新婚カップルの二人が、
式場スタッフと相談し、
通訳の立ち位置などを決めてから、
通訳を依頼すると、
当日の通訳も、よりスムーズになり、
落ち着いた式を迎えることができると思います。

このほか、結婚式では、
一般的に使われる、定番の讃美歌もあります。
この歌の歌詞や音楽も、
事前に相談すれば、式場の方が、
貸してくださいます。
これを入手して、通訳者の方に前もって渡しておくと、
より良い通訳ができます。

逆に、通訳者を目指す皆さんも、
この辺の定番の歌などは、
来たるべき日に備えて、
勉強会を開いて、チャレンジしておくのもいいかもしれません。

結婚式や披露宴に、手話通訳の方を依頼するときは、
単に日時だけを伝えるのでなく、
ある程度の中身や進行、
原稿などがある場合は、その資料も一緒に渡しておくと、
通訳の方も、きちんと準備してくださいます。

通訳を成功させるためには、
式を挙げるカップル自身が、
どのような式・披露宴にしたいのか、
通訳の方にどんな通訳をしてもらいたいのか、
具体的なイメージを持って、
前もって伝えることが、とても大切になると言えそうです。

結婚式や披露宴の準備、
細かいことがたくさんあって、たいへんですね。
ぜひ、通訳の配置についても、
具体的イメージを持って、あきらめず準備を進め、
すてきな、その日を迎えてくださいね。
この日を越えて、
多くの方に見守られながら、
新しいスタートを切ったカップルの皆さんには、
素敵な未来が待っていると思います。