聞き取り通訳のあり方・・立場によって判断が変わる場合があると思います。

手話仲間の方が言いました。
「話のまとまってない人の通訳は、やりづらい。
通訳泣かせだよね。」
手話通訳には、
音声の話を聞いて、手話にする 聞き取り通訳と、
手話を見て、それを日本語にする 読み取り通訳がありますが、
これは、前者の「聞き取り通訳」についてのお話です。

やりづらい 聞き取り通訳 ベスト3は、
1、文の頭と終わりで、主語がいつの間にか入れ替わってしまっていて、
何を言っているかわからない。汗
2、話が蛇行して、全体としてまとまっていない。汗
3、そもそも何を言っているのか、滑舌や口の開き方が悪くて、
聞き取れない!大汗
・・・と言ったところでしょうか。

1、2、は、
結果として、何を言っているか主題がわからなくなってしまい、
通訳者は、何をどう通訳していいか、わからず混乱してしまいます。
また、3、は、
そもそも、話が聞き取れないので、
通訳自体が不可能!!汗汗

手話仲間は、これを重大問題だと言います。
しかし、私は、
これは、問題ではないと考えます。

ん?
だって、ちゃんと通訳できなければ、
役割も果たせないし、
ちゃんとろうの人に伝えられないのは、
通訳者として、一大事!!
なんとかしなくていいの?
そう思う方も多いですよね。
それはそれで、一つの正しい感じ方・考え方かもしれません。

でも!
でもでも!!
よーく考えてみてください。

通訳者というのは、
お話を、『通訳』して、もう一方に伝える役割。
「元の話が悪い、または、わからない内容なら 
正したり直したりする」
という役割は担っていません。笑
つまり、実は、
「わかりづらい話は、わかりづらいまま伝える。」
というのが、誠実な通訳なのです。笑
この判断基準は、大事に持っていなければ、
通訳者が立場を逸脱してしまう恐れがあるので、
ちょっと注意が必要かもしれませんね。

ただ、これも、
立たされた通訳者の、
立場によって違う場合があるように思います。


多くの観客が一堂に集まり、
聴こえる人も聴こえない人も一緒にその話を聞き、
お話する本人を、止めることもできないような、
大きな講演会などで、
そもそも、もとの内容がなんだかまとまっておらす、
「聴こえる人にも!わかりづらい」場合、
私は、手話通訳もわかりづらいのが、当たり前だと思います。笑
話の責任は、話者にあり、通訳者にはありません。
優しく、心ある通訳者の中には、
「話が分からなかったから、ちゃんとした通訳できなかった」と、
落ち込む人がいます。
その気持ち、よーくわかります!!
ただ、
もとの話し手が、きちんとした話ができなかったのなら、
その状態も、そのまま伝えるのが通訳です。
実は、通訳者には、
もとの話を、正したり直したりする、
権利も義務もありません。笑
(ただし、話がつかめなかったのが、
通訳者の日本語の理解力に起因すると判断される場合は、
その通訳者は、もっともっと勉強したいですね。笑 ファイト!!)

また、通訳が、
誰に依頼されたものなのかによっても、
あり方は、変わると、私は思います。


聴こえる側の人が、
話の内容自体を、
聴こえない人にわかってもらいたいという主旨があり、
その人に依頼された通訳なら、
「あなたの話は、分かりづらいです。」
「今、意味が分からなかったので、
もう一度噛み砕いて話してください。」
「今のお話では、ろうの方に通じにくいです。
具体例を言ってください。」
と、指摘して、よりわかりやすい話を引き出し、
ろうの方に伝えることも、必要かもしれません。


また、あなたが、ろう者に直接依頼され、
同行した通訳なら、
話が分からない時の質問は、通訳者からではなく、
ろうの人本人から言ってもらうことが大切です。
この場合、あくまで、ろうの方が主体ですから、
その方がわからない時は、
わからない旨を、話者に伝える、
また、ろう者が嫌だと言えば、
通訳者が「ここは受けたほうがいいのでは?」と思ったとしても、
それは、自分の考えであって、ろうの人の考えではありません。
「ご本人は、嫌だと言っています。」と、
相手に伝えることが必要です。

このように、
立場によって、通訳の方法・あり方、
やっていいことと悪いことに違いがあるということ、
ちょっと気づかない場合も多いと思いますが、
考えてみたいですね。

またその中で、
ろう者が聴こえないがゆえに不利になることは、
誰がクライアントであっても、
してはならないということも、
手話通訳では大切です。
問題は、なかなか複雑ですね。
現場によっては、どんなベテランも、
いつでも、反省や気づきの連続です。汗

いろいろ、皆さんと、意見交換すると、
手話通訳も奥が深いなと、教えさせられます。
本当に、ありがとうございます。
みんなで一緒に考えていきましょう。

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