「ろう者」という手話

水曜日にお邪魔した手話サークルで、
皆さんが、「ろう者」と言う手話を確認しておられました。

「ろう者」と言うのは、
耳の聴こえない人を意味する言葉ですが、
少し前まで、「ろうあ者」という言い方が、一般的でした。
これは、「耳が聴こえない」と言う意味の「ろう」と、
「口で話せない」と言う意味の「あ」の、
二つの言葉が一緒に使われていたものです。
かつては、“聴こえない人は話せない”という考え方で、
多くの人が「ろうあ者」という言葉を使っていたんですね。

しかし、時代が変わり、
補聴器の性能も上がって、発語訓練も進んだ現在、
聴こえないからと言って、必ずしも、
話せないかというと、そうでもなく、
発音もうまく、日本語の国語力も高い人が、たくさんおられます。
そんな中、「ろうあ」という言葉は、だんだんすたれ、
最近では、「ろう」「ろう者」という言い方が、
主流になってきたのです。

それに伴い、手話自体も、
かつてと、現在では、表現方法が変わってきています。

かつて、「ろうあ」と言われた時代は、
両手でそれぞれ、耳と口を押さえることで、
聴こえず話せないことを示していました。
それも今では、両手で左右の耳を押さえ、
「ろう」であることだけを示し、
口を押さえる表現はなくなってきているのです。

ただ、古くから手話をしている人は、
口では「ろう者」と言っているのに、
手が、なんとなく動いて、
耳も口も押えている場合がよくあります。
これを、みんなで見直そうというのが、
今回のお話の主旨でした。
せっかく「ろう者」と言う言葉を使うなら、
手も! 耳だけを押さえ、口は押えない!!
こう、配慮することで、
より「ろう者」と言う言葉への理解を深めようと、
いうわけなんですね。

一方、日本最大のろう者当事者団体「全日本ろうあ連盟」は、
現在も、名前に「ろうあ」と言う言葉を使っています。
聴こえない人々が、「耳が聴こえず」「話せない」という障害を
長い時間をかけて乗り越えてきた。
その歴史を大事なものと考え、
現在も、この表現を残しているのだと、
サークルの先輩格のろう者や通訳者の方が、
お話しておられました。

サークルの中で、このように、
手話やろう者の歴史を、伝えていくこと、
とても大切ですね。
そうしたことを心を込めてお話されていた
運営者の皆さんの姿が熱く、
私自身、とても勉強になった1日でした。
本当に、ありがとうございました。
感謝。

ろう.jpg
「ろう」
両手で、両耳を押さえて。

者.jpg
「者/人々」
男性を示す親指と、女性を示す小指を立て、
それを両側に広げて、何人もの人がいることを表す。