パースのろう学校~4人体制の授業!!

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先日、横浜市の手話サークルにお招きいただき
以前経験したオーストラリアのろう学校(小学校)の様子について、
お話させていただきました。

日本では、ろう学校の先生は、
手話ができるかどうかの条件を問われませんが、
西オーストラリアでは、
聾学校の教諭=手話の資格がある(手話の単位を取っている)
というのは、常識。
私が「日本のろう学校の先生の中には
手話のできない人もたくさんいる。」と話すと、
現地の先生方は、
「え? それじゃ、どうやって、
ろうの子供たちとコミュニケーションを取るの?」と、
驚きの顔で質問してこられました。汗
西オーストラリアのろう学校では、
先生が手話ができることはあたりまえのことなのです。

また、ろう学校の先生方は、
小学校1~2年の子供たちを相手に、
「学校で、私たちはなぜ勉強するのか?」とか、
「みんなには、立派な大人になってもらいたい。
そのために、どうしたらいい?」なんて、真剣に話し、
子どもたちと、いろんなディスカッションも、
手話で頻繁に行っていました。

小さなころから自分で考える習慣をつける!!
というのは、聴こえる子、聴こえない子に関わらず、
みんなの、大事な勉強の一つのようでした。

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パースのろう学校では、生徒10数人に対し、
指導チームは、常に4人体制。
一人は、手話の資格を持つ、学校教諭。
上の写真で、向かって左側にいる手話をしている人は、
手話通訳者です。
子どもの中には、人工内耳の子もおり、
先生が、口話で話しかける場面もあります。
そういう時は、さっと通訳者が入り、
口話でどんな話をしているのかが、
ろうの子供たちに伝えられます。
それを見て、子どもたちも、
手を挙げて、別の意見を話す場合も。
それから、写真の隅に、
ピンクの服で背中だけ写っているのは、
事務方スタッフの方で、
必要な資料などがあると、
パソコンなどで調べてサッと出してくれたりして、
授業を常にフォローしています。

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この写真で、手話をしているのは、ろう者スタッフ。
絵本の読み聞かせの時は、先生が声で読む隣で、
ろう者のスタッフが、
素晴らしいろう者のネイティブな手話で、
その内容を表現しているのです。
ろう者の豊かな手話による美しい絵本の語りに、
私も、子どもたちも、すっかり見とれてしまい、
楽しいストーリーの世界へ連れて行ってもらいました。
こうしたろうの先輩たちの姿を、
子どもたちは、毎日見て、大きくなります。

授業は、どのクラスも、常に、
先生・通訳・事務スタッフ・ろう者スタッフの
4人体制。
各スタッフが力を合わせて、
互いに助け合いながら、
子どもたちの教育のため、
情熱を注いでいる姿が、
とても印象的でした。

西オーストラリアには、「言語法」が確立されており、
英語や、日本語のほか、
原住民であるアボリジニの各部族の言葉も含む、
130以上の言語が、
その権利を保障されています。
その中には、きちんと「手話」も明記されており、
他の言語同様、
様々な場面で守られているんですね。

そんな流れを汲んでの、ろう学校での、
手話による教育。
ここでは、「障害者を助けてあげるための手話」ではなく、
「ろう者の言語としての手話」が息づき、
教育現場にも、浸透していました。

母の故郷でもあるオーストラリアの情報は、
比較的、日本では、少ないのですが、
縁あって1週間通った、パースのろう学校では、
私も、様々な気付きや学びをいただきました。
多くの方に、これからもご紹介して行ければと思っています。
感謝。