内容のわからない話は手話通訳できない!!大汗

とある方から、質問をいただきました。

「先日、地域で通訳の依頼があり、出かけましたが、
相手の方の話している内容がわからず、
きちんと通訳できませんでした!!
どうしたらいいでしょう?」

答えから、先にお伝えします。

「その通りです。あなたは正しい!!
内容のわからない話は、通訳は不可能です。」
汗&笑

通訳とは、一つの内容を、
別の言語に置き換えて話すものであり、
もとの話の内容がわからないのに、
別言語に置き換えることはできません。
これは、とても当たり前のことです。

私にも、いろんな経験があり、
人生で最初の通訳は、まさに、
その地獄の洗礼を受けました。汗汗

年齢20歳(つまり公的通訳者として認められる最低年齢)で、
初めて、大阪府の登録通訳者になり、
最初にかり出されたのが、
大阪府と障がい者の交渉場面だったのです!!

当時の私は、チャラチャラしたただの大学生。
確かに手話の腕は良かったかもしれませんが、
その時の私は、単に、ろうの友達と飲み歩いていただけ。
障害者の悩みも問題も、
な~~~~んにも知りませんし、
そんな方々への、国や都道府県からの保障や政策など、
なーーーーーんにも、興味もありませんでした。
(大汗!ごめんなさい。)

そんな私が参加したのは、府政の障害者保障にかかわる、
大事な意見交換の場。
障害者も、聴こえない方々ばかりでなく、
車いすの方も、目の悪い方も、精神障害の方も、
いろーんな方が、一同に集まっておられ、
「〇〇の、20%は、なんとかで、XXが確認されておらず、
これは、大阪府の範囲なのか、市の範囲なのか・・・・・」
「それで、福祉住宅がどうのこうので・・・」
などと、意見がどんどん出ます。

「え?ええ~~~~~~!!
何がどう20%で、どちらがだれに何を確認していないの?
大阪府と大阪市って、どう違うの???」
「で、福祉のなんだって?そんなことがあるのか。知らなかった~!!
それで・・・? ええ?ええ~~~~~~~~~~~~~!!」
・・・これが、当時の私の頭の中の状況です。

そして、とにかく内容が全然わからないのに、
次の話もその次の話も出て、
私は、とうとう、そこで立ち尽くしてしまいました。
そうです。
会議はどんどん進んでいるのに、
通訳者が、通訳をせず、みんなの前でただ立っていたのです。
「・・・・・・・・」

するとその場にいたろうの皆さんが、
騒然としてきました。
「なに?何が起きたの?
話の続きは?今、誰が何の発言をしているの?」
何人かのろう者は、前のめりになり、立ち上がる人も出てきました。

その時、別の優秀な通訳の方が気付いてくださり、
私は、自分の意思ではなく、その人に突き飛ばされるようにして、
通訳を交代したのです!!大汗
そのあとは、ほぼ、長い時間その方が通訳をしてくださり、
全ての内容が、ろうの方々に伝えられました。
でも、それでは、その人の疲労も、どんどん蓄積してきます。
何とか私も、頑張らなければ、そこに参加した意味がありません。
ろうの方のためにも、また、頑張ってくださっている、
パートナーの通訳の方のためにも、私も何とかしなければ!!
しかし・・・・
次に私が、その方から通訳をもぎ取ったのは、1~2時間後、
午前の部が終了し、
「次は、昼休みです。再開は13時からです。
トイレは、何階のトイレを使用してください。」などと、
私にもわかる事務連絡の話になってからでした。涙涙

この後、ろうの方にも、相手の通訳の方にも、
こっぴどく怒られたのは、言うまでもありません。

私は、大事な会議の通訳に、事前資料も読まず、
何がわかって何がわからないのかも、調べることなく、
ただ、手ぶらで、現場に行っただけだったのです!!
大汗

私は、この時初めて、
「わからない内容は、通訳なんてできない。
わからないなら、予習をしていくのが通訳者の常識だ」
と気づきました。大汗
20歳のかわいい女子だったので、
まだ皆さんにも多少許していただき、
次から一生懸命、予習するようになりました。
でも、障害者にとって、
とても大事な生活にかかわる行政交渉で、
このような失敗をしたことは、
今でもずっと忘れられません。
通訳活動をするうえで、最大の教訓を得た出来事でした。

時代も変わり、
地域通訳では、こうした場合、
チームで分担を決め、事前に資料集めをしたり、
講演の通訳では、前もってその方の書いた本を読んだり、
また、数人で交代するときは、
あらかじめ出てきそうな単語を、
互いに確認して統一したりすることも、
共通ルールとなってきているように思います。
通訳現場では、それを見るろうの方のために、
また、通訳者みんなが助け合うためにも、
こうした予習は、欠かせません。

このほか、同様に、私は20歳の時、
ろうの方を集めた生命保険の説明会で、
これもまた、内容がわからず、ちんぷんかんぷんだったことがあります。
結局、保険会社の担当の方と、
興味をしっかり持った聴こえない方ご本人たちが、
資料を指さしたり、互いに板書をしたりして、
進めていただいたこと。

料理の講習でも、料理なんてしたこともなかった私は、
器具の名前もわからず、
「今、この講師がこういうことを言っているけど、どのことかしら?」
と、ろうの方に尋ねると、
「あんた、それは、こっちの器具のことよ。」
などと、あろうことか、
逆に、ろうの方に教えてもらいながら通訳をしたこともあります。
汗汗汗!!!

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!!

私は、エンターテイメント系の盛り上げ型通訳は、
何の準備がなくても、相手の方のノリに合わせて、することができますが、
(多くの方は、こちらの方が苦手のようですが・・・)
まじめな話と、料理はダメ!!
そうか、私には、得意分野と苦手な分野がある!!大汗
・・・こうして、
おのれを知る機会ともなった通訳現場に、
心からのお詫びと感謝をいたします。

私が通訳がだんだん上手になってきたのは、
そのあとのことです。
温かく見守ってくださった皆さん、
本当にありがとうございます。

というわけで!!
特に苦手分野は!!予習をしてから通訳に出かけるのがよいかと思います。
みんなで力を合わせて、頑張りましょう。
ご質問くださったSさん、ありがとうございます!!
皆様に、心から感謝いたします。

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昨日、仕事の打ち合わせで食べたカレーです。