「暖めてほしい」・・・?

とある手話の現場で、
「あなたに私を『暖めてほしい』」という日本文に、
「春(暖かい)」+「好き」
という表現をつけているのを、見かけました。
これ、ちょっと意味が違っているかもしれません。
なーんとなく、日本語に手話単語をくっつけて並べてしまうと、
本来の「相手が自分を暖めてくれることを望む」表現には、
ならない場合もありそうです。

暖かい.jpg
「暖かい(春)」Ⓒ手話あいらんど
下から暖かい空気が立ち上るようなイメージで。

好き.jpg
「好き(ほしい)/~したい」Ⓒ手話あいらんど
のど越しのいい飲み物が、
のどをすっと通っていくようなイメージが、語源なのだそうです。

「好き」という単語は、
もちろん「ほしい」という意味にも使われますし、
動詞の後につけば「~したい」という意味にもなります。
「買う」+「好き」で、「買いたい」。
「飲む」+「好き」で、「飲みたい」。
こんな風にも使われたりもします。

でも、単純に、「春(暖かい)」+「好き」と手話をつなげても、
意味は、「春が好き」であったり、
「暖まりたい」と言っているのであり、
本来表現したかったであろうはずの、
「暖めてほしい」には、なりにくい。
これ、本当は、どうすればよかったのでしょうか?

意訳も含め、表現方法は、いくつもありますが、
「暖かい(春)」という単語を使いたいなら、
代表的な手話訳は、2つあると思います。

① 
このまま、「暖かい(春)」+「好き」を使い、
本来の意味を表現したい場合、
「暖かい(春)」という手話は、
テキストに載っている単語表現のまま、
下から上に向かって手を動かしても意味が成立しません。
相手のほうから自分に向かって、
暖かい風が吹き上げるように表現し、
手話の動かす方向を、相手から自分へと、
単語の中で、きちんと示す必要があります。
そして、この「相手から自分を暖める」という表現に、
「好き」をつければ、
「暖めてほしい」というニュアンスは、伝わります。
ただ、この表現は、初心者には、少し難しいかもしれません。
手話には、最初に習った時の基本形のほか、
使い方によって、様々な活用があることを忘れると、
まったく意味を取り違えた表現になってしまうのです。
(日本手話のナチュラルアプローチなどで、
会話をメインに学んでいる人は、
手話の活用自体が、会話の中に盛り込まれており、
それを自然に覚えていける場合もあるので、
こうした表現も、すぐに思いつき、
豊かに表現できる方が、いらっしゃるかもしれません。)


そこで、私のお勧めは、
「暖かい(春)」+「助けてもらう(+ 相手に頼む表情をつける)」というものです。
これなら、「暖まる」ということを「相手に手助けしてほしい」という表現になり、
「暖めてほしい」という意味が伝わります。
ただし、この説明文も、またまた、くれぐれも、
単語の羅列で、考えてしまわないよう、ご注意ください。笑!
「助けてもらう」という表現は、
「助ける」+「もらう」ではありません。大汗
『助ける』という手話は、相手に向かって手を添えますが、
『助けてもらう(助けられる)』という表現は、
相手から手を添えられる方向に手を動かすという逆の表現で表します。
また、「助けてもらう」とあらわすとき、この場合は断定形ではなく、
「相手に物事をお願いする」という『表情』をつける必要があることもポイントです。
こうしてブログで文で説明すると、ちょっと難しいですが、
手話には、常に、表すべき方向があり、意味を伝えるべき表情があり、
それを間違えれば、意味は、まったく違ってしまうということを、
私たちはよく理解しながら、学びあっていきたいですね。

助ける.jpg
「助ける」Ⓒ手話あいらんど
親指を立てた手に、もう一方の手を、自分の側から添えるように。
「手を貸す」「手伝う」などの意味になります。

助けられる.jpg
「助けられる」Ⓒ手話あいらんど
親指を立てた手に、もう一方の手を、相手の側から添えるように。
「手を貸してもらう」「手伝ってもらう」などの意味になります。


簡単な二つの手話単語の説明でしたが、
長―くなってしまいました。
本当にいつも読んでいただいて、ありがとうございます。

なお、上記文の手話の翻訳の方法は、
ほかにもいろいろあると思います。
ぜひ、皆さんも、手話学習の場で、
ディスカッションしてみてくださいね。
感謝。