中途失聴者・難聴者にとっての手話!!


今年は、手話の大切さを、
再認識した年でもありました。

11月に開かれたみみカレッジで、
中途失聴者の年配の方が話された体験が、
心に残っています。

「大人になって、突然耳が聞こえなくなり、
絶望的な気持ちになった。
周りの人の話が全く分からず、ついていけず、
誰といても独りぼっち。
聞こえないことが、こんなにつらいとは知らなかった。
ある日、
『聞こえない人にも”手話”という会話手段がある。習ってみては?』
と知人に言われ、
半信半疑で手話教室に行ってみると、
みんなが手話で話している。
少しすると、だんだん慣れてきて、
なんと!みんなの話が分かるようになってきた。
私は、その時の感動を忘れない。
”耳の聞こえない自分が、人の話が分かる!!!”
まるで、”自分の耳が戻ってきたような気持ち”になりました。」

その方は、そこから、ずっと手話を使い、数十年。
今も、その手話を使って、人前で堂々とお話されています。
手話はその方にとって、大事な大事な「言葉」になったのです。

私は、時々、様々な手話サークルにもお邪魔しますが、
今年は、そこでも、難聴者の方から、
あるお話をお聞きしました。

「私は、子供のころから、難聴でした。
普通校に通っていましたが、
聞こえないため、呼ばれても返事をしなかったりして、
けんかになったり、
みんなの言っていることがよくわからなかったりして、
なかなか、周りに溶け込めずにいました。
もちろん、よい友達もいて、
何かわからないことがあったら、あとでゆっくり教えてくれたり、
メモで書いてくれたり、
そんな友達にも、ずっと仲良くしてもらい、
良い人間関係にも恵まれて、学校を卒業しました。
大人になって、人並みに結婚もしました。
夫も、普通の耳の聞こえる人です。
子供も3人生まれました。
子育ても、一生懸命しました。
ある時、NHKで、手話番組や手話ニュースが始まり、
この“手話”が、できたらいいな~と思い、
毎日、見始めました。
1年くらい見ているうちに、目が慣れて、
だんだん内容が、わかるようになってきました。
ろうの友達がいるわけでもないし、
自分で手を動かしているわけではないので、
ぺらぺら話せたわけではありませんが、
私は、これをきっかけに、
だんだん手話が分かるようになってきたのです。
それで、ある時ふと思いたって、
子供のPTAに、地元の手話通訳を依頼してみました。
初めて、私は、 “聞こえない人” という立場で、
そういう制度を利用したのです。
すると、どうでしょう!!!!!
驚いたことに、いつもPTAで、あとから、先生や親切な方に、
まとめて教えてもらっていた
授業参観や、保護者会の相談内容が、
手話で、その場でそのまま “リアルタイムに!”
知ることができたのです!!!
私は、その時、涙があふれて止まりませんでした。
ぬぐってもぬぐっても、あとからあとから、涙があふれてくるのです。
私は、『人の話がその場で分かる』ということを、
生まれて初めて、体験したのです。

その日からです。
真剣に 『 手話を学んでみよう!』と思ったのは。
すぐに手話の勉強できるところを探し、
地元にも手話サークルがあるのが分かって、
通い始めました。
夜に家を空けることになるので、
家族に相談したら、夫もとても応援してくれて、
さらに、小さかった下の二人の子供が、
”自分たちも一緒に行って手話を習う!!”
と言ってくれたのです。
そこから、このサークルにお世話になり、
私も、だんだん手話がうまくなり、
また、そのおかげで、
今まで口話だけだった家庭でも、子供たちと一緒に、
手話たくさんのことが話せるようになり、
私にとって、サークルはなくてはならないものになりました。

それももう、昔のことですけどね。笑
だから、私、本当にありがたかったと思って、
その恩返しに、今ではこのサークルで、
手話指導者をしています。
皆さんに、手話を学んでいただいて、
本当に、うれしいです。」

その話をお聞きして、今度は、私のほうが胸が熱くなりました。

聞こえない人にとって、手話は「言葉」。
そんな言い回しは、よく耳(目)にするようになってきましたが、
こうして、中途失聴者や、難聴者の方々が、
一人一人手話に出会い、
喜びをもって、獲得されてきたお話をお聞きし、
改めて、手話の大切さを実感しました。

手話にまつわる活動を、日々続けていく中、
忙しさの中で、いつの間にか忘れがちになっている、
大切な「聞こえない人の心」。
それこそが最も大事なものであり、
私たちが日々運んでいかなければいけないものだと、
暖かい思いをいただいた年末となりました。

様々な出会いに心から感謝いたします。
2016年も、ありがとうございました。


南 瑠霞
手話パフォーマー・コーディネーター、手話通訳士。

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年末の世田谷公園。
手話パフォーマンスきいろぐみは、いつも、
この公園の近くで、稽古をしています。