地域の登録通訳者の能力にはばらつきがある?

先日、とある通訳に伺いました。
とても親しい友人のろう者で、緊急事態だったので、
駆け付けたのですが、
そのあと、ちょっと気になる話が出ました。

通訳に伺ったろうの方の 聞こえるお相手の方が、
「今日の通訳はわかりやすかった。
このろうの方とお話したいときは、また、
南さんが来てくださるんですか?」
とおっしゃいました。
ところが、私は、本当に緊急事態に、
ろうの友人が困っていたので、急いで行っただけで、
今回は、完全に友達としてのサポート。
その地域の通訳者でも何でもありません。
また、そこは、車で1時間半かかる場所で、
その日は、本当にたまたま時間があって行けただけで、
昼間のその時間は、普段絶対仕事でふさがっており、
次のお約束はできません。

それで、その話を通訳すると、ろうの友人が、
「あの・・・南さんは、いつもとてもきちんと通訳してくれるので、
緊急事態で、来てもらいましたが、
次からは、地元の通訳を呼ぶことになると思います。
でも、地元の通訳は、自分に合う人も合わない人も、
ベテランの人も、新人も入り混じっていて、
誰が来てくれるかわかりません。
だから、通訳者が来ても、今日のように、
スムーズに話し合いができるかというと、ちょっと心配です。
そういう時は、もっと筆談も増やして、
わかりやすく話してください。」
と、話し始めました。
(それも、私が通訳。)

そうなんです。
各地の地元の登録通訳者の方には、
ベテランで、様々な経験をし、
いろんな事態に対応能力の高い人もいれば、
2~3年手話の勉強をして、
「人材が足りないから、勉強だと思って通訳者として、登録してね。」
と先輩方に言われ、自分でもまだまだだなーと思っているけど、
一生懸命やってみようと、登録した人もいます。
また、人によって、
行政のかたい原稿のあいさつ文なども、事前にきちんと準備すれば、
とても上手に手話表現できる人も、
かえって、フリートークの通訳のほうがしやすいという人も、
また、私のように、基本どんな内容でもペラペラ通訳できるのに、
なぜか、料理の話になるとちんぷんかんぷんになって、
まったく通訳ができなくなるという場合もあります。汗&笑
通訳者も、自分の得意分野や、不得意な分野があるのです。汗汗
もちろん、そういったことがないように、幅広い勉強をし、
事前に準備をし、責任をもって現場に出かけるのが、
通訳者としてのあるべき姿ですが、
やはり、一人一人、能力や個性には、特徴や限界があるわけです。
そんな中で、
自分の通訳に誰が来るかわからない。
というのは、ろう者にとっては、ちょっと不安な面もあることは、
事実です。

ろうの友人は、その辺のところも、今後のために、
相手の方に話したわけです。

さて、ここで大事なのは、
「地域の登録通訳者には、能力にばらつきがある」
ということでは、ありません。
それはそれで、現実ではあるのですが、
実は、私も、かつては、ド新人だった!ということを、
振り返ってみたいと思います。大汗
多くの通訳者は、最初から天才的に、
通訳がうまかったわけではありません。
多くの手話通訳者は、
ろう者が我慢し、ろう者が教え、ろう者が育てて!!
今日に至っているのです。汗&笑
もし、自分が少しは、ましな通訳者になれたかも!
と思ったら、それは、それだけ、多くのろうの人が、
その通訳者に、下手でも「大丈夫だよ」と声をかけ、
失敗しても「また次に頑張ってね。」と励まし、
時には、「ここがダメ」と、言いたくないアドバイスもし、
一生懸命育ててきた賜物です。
私自身、今回のろうの友人をはじめ、多くのろうの方々が、
どんなにへたくそでも、やらかしちゃったときでも、
叱ったり励ましたりして、導いてくれたから、
ここまで来ているわけです。

また、このろうの友人が言うとおり、
通訳を受ける側も、
その通訳者を頼り切るばかりでなく、
自分のできることをして、相手に伝えたいと、
互いが意思表示しあうことが、
コミュニケーションをよりスムーズにします。

各地の、地域の登録通訳者は、決して、天才ぞろいではないかもしれません。
でも、その中で、通訳者も、ろう者も、そしてその通訳を受ける聞こえる人も、
みんなが力を合わせることで、より良い情報のやり取りができ、
通訳もまた、より能力を発揮し、
そこから、聞こえない人を取り巻く人々の環境も、
良い方向に変わっていくのだと思います。

最初は戸惑っておどおどしている新人通訳者たちも、
ここから、様々な経験を積んで、成長していくんですね。
そいう言う意味で、聞こえない方々も、
我慢しながら、そういう通訳者に付き合ってくれています。
もちろんこの状況は、良いことばかりではありませんが、
逆に、悪いことばかりでもないということです。
その中の何人かは、のちにとても優れた通訳者になる可能性があるからです。

今回は、たまたま伺った通訳現場で、
別の角度の問題に、あらためて気づかせてもらい、
勉強になりました。

今私が、手話の活動で、誰かに何かをほめられたとしたら、
それは、その数だけ、私の後ろにろうの人たちがいるということ。
その豊かさに、感謝しながら、
ここからも、一歩ずつ進んでいければと思いました。

いつも、ブログを読んでいただいて、ありがとうございます。


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都内は、すっかり梅の季節です。