「カルチャーギャップを埋める」都内講演御礼


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Photo by Miyako Hastushi

今週、都内にある市の登録通訳者の勉強会に、
講演会の講師として呼んでいただきました。

およそ2時間の間で、
私のこれまでの活動や、
登録通訳者の皆さんにとっての、
見落とされがちな一面について、
皆さんとディスカッションしながら、
お話を進めさせてもらいました。

その中でテーマとなったのが、
「カルチャーギャップ」。
通訳の現場では、
単に話の内容をきちんと翻訳して双方に伝える以外にも、
私たちには、大きな仕事が待っているのです。

○ 演者・講演者についたら『手話通訳が邪魔』と言われた
○ 手話通訳者がろう者から見えないので踏み台に上ったら、『通訳者が高いところに立つのはマナー違反』と言われた。
○ 個人の対面通訳で『手話通訳の方はろうの方の隣に座ってください』と言われた。
○ 相手の聞こえる方が、手話通訳者ばかり見て話す。
○ 会議通訳で、一度に何人もの人が、同時に話し始めた。

これらは、すべて、
聴者とろう者のカルチャーギャップから生じた
通訳現場での出来事です。

「通訳が邪魔」と言われても、
ろうの方がそこにいるから手話通訳が必要なのです。
これは、ある意味「ろう者は邪魔」と言われているのと
同じ意味になってしまう場合もあります。
ろうの方から「手話が見えない」のは、
聞こえる人でいえば、「マイクが断線して、
スピーカーから話者の声が聞こえず、
何を言っているのかわからなかった」のと同じ状況です。
また、手話通訳者は、ろう者の隣に座ったのでは、
ろう者からは見えにくい位置であり、
動かした通訳の手もぶつかってしまうかもしれません・・・
こうしたことは、通訳者の側から動いて、
環境を整えなければ、
通訳が成り立たなくなってしまうこともしばしばです。

通訳者になるために勉強しているときは、
「聞き取り通訳がちゃんとできない。」
「ろう者の手話が読めない。」
など、技術面で多くの方が悩み、
必死に勉強を重ねますが、
現場では、その次のハードルが待っています。
通訳に出かけた先での、こうした事例は、
事前に予測できないこともよくあります。
その場で、率直に主催者と話し合い、
手話通訳のベストポジションを探り、
ろう者の情報環境を守ることも、
手話通訳者の大事な役割になってくるのです。

こうした、聴者とろう者の感覚のズレに気づき、
見過ごされがちな少数者であるろう者と手話の都合や立場も、
適切に相手に伝えながら、通訳活動を行っていくことは、
現場での手話通訳者の大事な役目の一つになります。

そうは言われても、それでなくても、
内容を通訳するだけでも必死なのに、
そんな問題が起きたら、とっさに何ができるだろう??
そう思う方も多いかもしれません。汗
さあ、そこをもうひと頑張り!!
現場で「ちょっと相談させてください」という勇気!
そうしたものも、みんなで育て合っていきましょう。

手話通訳では、
内容自体で起こるろう者と聴者のカルチャーギャップも含め、
適切な情報の橋渡しができるよう心がけて、
私たちは、現場に向かいたいなと思います。

そして!!やはり!!
大切なのは「伝えたい」と思う心。
その心があれば、
何が足りなくて、どうカバーすればよいのか?
自分がどうすべきなのか?
適切な具体策も、
現場で周りの方とともに、考えていけるのではないでしょうかね。

みんなで、一緒に考えていきましょう。