「ろう者」?「ろうあ者」?


かつて、ある新聞の取材で、
「 私達は現場で普段、
先天的に耳が聞こえず手話を使う聴覚障害者のことを
『ろうあ者』という言葉で表現することがあります。
南さん達は、『ろう者』という言い方を使っているようですが、
この二つの言葉には、違いがあるのですか?
また、違いがあるとしたら、どういうことでしょうか?」
と、記者の方に尋ねられました。

最近では 行政でも 新聞でも
「ろう者」という表現を使う場面も
広がっては来ましたが
まだまだ 「ろうあ者」という言い方をする人も
いるようです。

ちょっと この二つの言葉について
触れておきましょう。

私も、ずっと昔、手話を学び始めたときは、
『ろうあ者』という言葉をよく使っていました。
でも、それから、数十年たち、今、
私の周りで「ろうあ者」という言葉を使っている人は、
格段に減ってきています。

「ろうあ」というのは漢字では「聾唖」と書きます。
『聾』は「耳が聞こえない」ことを示しており、
『唖』には「口でうまく話せない」という意味が含まれています。
ところが、この『唖』というのは、
聞こえないがゆえに二次的に発生している障害であり、
その人が『唖』という障害を持って
生まれてきているわけではありません。
又、ろうで、耳が聞こえないことを主体に考えた場合、
その人が、うまく発声できるかどうかを問う必要があるのか?
という議論もあります。
また、ろう教育が進んだ今、かつてとは違い、
トレーニングにより口である程度キチンと話して
意思疎通のできる人も、
かなり増えてきており、一概に聞こえないからと言って、
すぐに話せないと考えるのは、
行き過ぎなのではないかという考えも広がってきています。
つまり、「ろう」=「あ」ではない。
だから、耳が聞こえないことを示すなら、
「ろう」で十分その意味を伝えられる。
と、多くの人が考えるようになってきたのです。
そんなわけで、いつしか時を経て、
『ろうあ』という言葉は、今、
『ろう』というシンプルないい方に変わってきているんですね。

又、「聴覚障害者」という言い方・考え方にも、
最近では、違和感を覚える人が増えています。
聞こえない=障害 なのかどうか?
聞こえないとは、たんに耳が聞こえないだけであり、
背が高い人・低い人、髪の黒い人・赤い人・・・
そんな違いの一つとして、とらえていいんじゃないか?
ろうとは、耳が聞こえず手話という言葉を持ち、
ものを目で見て暮すという文化を持った、少数派の人たちだ。
それを障害者と言い切るには、抵抗がある。
そう思う人々にとっても、『ろう者』ということばは、
とても大切なものになっています。

「ろう者」という表現には、
そんな多くの人の思いが込められているんですね。
「ろうあ者」と「ろう者」、
ほんのひと文字の違いですが、
そこに秘められた熱い気持ち、
あなたもちょっと感じてみてください。


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関東も 季節は初夏に向かっています!