手話通訳士試験は、本当に難しいのか?汗


1月31日 第30回手話通訳士試験の合格者が発表されました。
あなたの番号もありましたか?

「手話通訳士試験って、難しいですか?」「手話通訳士になるのは、難しいですよね?」
と よく聞かれます。
確かに、手話通訳士は、一つのきちんとした省庁公認の資格なので、それなりの能力が必要です。
きちんとした知識や、手話のできない人に資格を与えても、その人は現場で求められる責任ある通訳をしてくれないとなると、それは聞こえない方にとって重大な問題です。資格にはそれなりの意味があると考えれば、きちんと勉強し、内容の伴った人でなければ資格は与えられません。

また、例えば手話の専門学校の授業に全部出席して単位が取れたとしても、その内容が身についていなければ、同様に、資格を取ることは出来ません。汗汗

今年度の手話通訳士試験は、受験者数が1105人、合格者108人。合格率は9.8%でした。
この数字だけ見ると、それなりに、合格率の低い資格試験の一つではあります。

でも、私は、手話通訳士試験は、それほど難しい試験だとは思いません。
例えば、全国の教員採用試験や、お医者さん、看護師さん、弁護士などの試験と比べたら、
明らかに、そもそもの試験範囲が、圧倒的にとても少ないからです!!

筆記試験については、
① きちんとした国語の理解力があり、言葉に対する良識があり、
② 聴覚障害者に関わる基礎知識や歴史一般と、
③ 聴覚障害者に関する福祉や法律の概略を理解し、
④ 手話通訳者としての一般的な倫理感覚があれば、
多くの人に、合格の可能性があります。

この範囲は、本一冊程度にまとめられ、様々なところで、専門の講習なども開かれています。先輩方が、まとめて下さったこうした内容を、ほぼ網羅すれば、決して怖い試験ではありません。

また、手話の実際の通訳技術についても、同じ日本国内で使われている言語の一つだと考えれば、英語やフランス語など、海外の言葉を学ぶよりずっと身近に触れることができるものです。
互いに日本語も通じ合いやすい発想の中で学べる点を考えれば、不安材料も少なく、条件的にかなり整った環境にあります。
やる気になれば、あなたの街に!!ろうの人がいて、友達になれば、様々な交流が持てる!ということです。

多くの言語の専門家を目指す人たちは、アメリカや、ヨーロッパや、中国や、様々なその言語圏内に留学し、お金をかけて、親元や家族とも離れ、その言葉を話している人たちの暮らしの中に入る努力をして、その言語を身に着けています。
それが、なんと、自分の住む町や、同じ県内で済んでしまうとなれば、他の言語と比べても、必要な環境を確保しやすく、実は、自分のすぐ隣に、手話がある!ということに、気付けると思います。

『手話通訳士になりたい』と言っても、その人によって、立場や状況も様々かもしれません。

おそらく、本当に「手話通訳士になる」人は、こうした環境の中で過ごすことを自分のものとし、多くの聴こえない人とともに、会話も、又、悩みも互いに分け合いながら、過ごしている場合が多いかと思います。
つまり、ろうの方と友達になり、日頃、楽しく手話でおしゃべりし、聴こえない方々と、日々、喜びも悩みも共にしている。ということですね。

一方、「手話通訳士ってどんな資格だろう?」とか、「手話を学んだらすぐに手話通訳士になれるのかな?」と、漠然と思い描いている方もいるかもしれません。

そういった後者の皆さんが、「手話通訳士になりたいな。」と思っておられる場合には、
ぜひ、地元のろうの皆さんと積極的に出会う努力をし、その皆さんと豊かに交流し合うこと。そのうえで、上記の筆記試験の内容をクリアすること。
これを、乗り越えれば、手話通訳士になれる可能性が広がるということを、お伝えしたいと思います。

また、手話通訳士を目指さなくても、ろうの方とは、豊かなお友達になれますし、手話がうまくならなくても、通じる範囲で楽しく交流することもできると思います。
手話通訳士を目指さない人に、手話を学ぶ資格がない、・・なんて思う必要がないということもお伝えしたいです!!笑

「手話通訳士試験は難しいですか?」と、尋ねて下さる方の中には、「手話を学ぶ」=「手話通訳士を目指す」と、思いこんでおられる方もいるようです。
でも、それって、ちょっと本末転倒!!
資格のために学ぶ前に、目の前にいるろうの方と友達になり、様々な交流を持つこと、その思いを伝え合う手段の一つが手話なのだということも、大事にしていただきたいと思います。

『手話通訳士試験は、難しいですか?』と、尋ねられたら、私は、「あなたの、手話を学ぶ目標は、なんですか?」と、多くの場合、質問返ししています。笑
意味なく、何でもかんでも「手話通訳士」を目指すより、多くの方には、まず、出会いと触れ合いを大事にしていただきたいと思うからです。

そのうえで、本当に、「手話の能力を本格的に通訳の域まで高めたい」「言語としての手話を、ある程度形になるまで学びたい」「本気で、手話通訳士として、聴こえない人の役に立ちたい」そう思ったあなたには、手話通訳士の試験は、もう、そんなに難しいものではなくなっているはずです。
そんなあなたは、思いを支えるだけの、聴こえない方との心の交流や、そこから積み重ねた裏付けのある能力が、育ち始めているはずだからです。

今年、その「心」のハードルを乗り越えたのは、108人。
それは、いよいよ本格的通訳のステージに立ったということでもあります。ここからの修行の方がもっともっと出会いは広く、時間も長い。
「手話通訳士試験は、本当に難しいのか?」「本当の手話通訳者とは何か?」を、ともに探る資格をあなたは得たのです。
いやいや、現場にはいろいろあります。ぜひ、一緒に試行錯誤しながら、良き道を切り開いて行きましょう。
そこに、あなたの手話通訳の力を待っている人がいます。
おめでとうございます。


※ 南 瑠霞:手話通訳士600番
(手話通訳士の名簿をみると、南の本名がわかります。笑)



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