手話通訳士(者)をめざす 最短情熱2年コース(笑)
以前アップしていた記事ですが、最近お問い合わせが多いので、再度アップさせていただきます。
「 南さんの活動にとても興味があります。手話通訳士になるには、どんなふうにするといいですか? 」と、20代の方から、メールをいただきました。
本当に、ありがとうございます。
最近は、大学生の中にも、手話通訳士を目指す方が増えてきました。
「手話通訳士」というのは、厚生労働大臣公認資格で、全国レベルでの唯一の公的資格。この厚生労働省の資格を持つ人だけが、現在「手話通訳士」を名乗っています。また、国会議員選挙の政見放送などの手話通訳は、この資格を持った人が担当しています。
(手話通訳士と名乗っている方の中に、本当はこの資格を持った方でない方もおられるので、一般の方はよく判断が必要です。また、各都道府県には、手話通訳士とは別の県独自の登録通訳者もおられます。こちらも優秀な方々が大勢おられます。)
さて、そんな前置きはこれくらいにして。。。
最近では、若い方々もますます目を向けるようになってきた手話通訳士。どうすればなれるのでしょうか?
今日は、最短情熱(短期決戦)コースについて、熱く!!ご説明します。笑( これは、誰かの準備した勉強コースがあるわけでなく、こうすれば、2年で通訳士になれる可能性がある!という、例です。笑 )
南の時代、もともと、手話通訳士の資格はなかったのですが、私の場合で、手話を学び始めて2年で、大学3年のとき二十歳で、大阪府の登録通訳者になっています。
手話通訳士制度誕生以降も、手話を始めて2年で、手話通訳士になった友人がいます。
ですから、これは私が考える 短期2年コースということになります。笑
最初の1年は、とにかく手話と聞こえない人に出会いまくる。
○ 地域の手話サークルに行く。
○ 地域の手話講習会に行く。
○ このほか、カルチャーセンターなどでも、手話講座があるなら、違った教え方をしてくれる場合もあるので、試してみる。
○ 毎週の手話サークルや講習会などは、終了後まっすぐ帰らず、必ず、お茶や飲み会に混ぜてもらう。( このとき、聴者同士の友達づくりの輪に入らず、必ずろうの人がいるグループに入る。→ 実は、ここが、一番とってもすごく!!絶対に大事!! こういう場でこそ生きた聞こえない人の手話に触れられる。これなくして、本気の手話学習はない!!残業で、手話講座に遅れても、そのあとのお茶から参加すべし!!)
○ そこで、良き通訳の先輩やろうの友達を作る。
○ 次に、そうした先輩やろうの人に誘ってもらい、出来るだけたくさん、手話やろう者のイベントに出かける。( 地域の手話サークルの交流会とか、ろう者の親睦旅行とか、運が良ければ、全国手話通訳問題研究会とか、全国ろう者大会などにも誘ってもらえる。 )
○ また、それにも慣れてきたら、そういうイベントの運営のお手伝いをする。
○ これで、大体、みんながどんな考えをもち、どんな様子で、手話をしているかが、わかってくる。
○ こういう積極的な人は、周りにも歓迎され、かわいがられるので、初心者でも、かなりフットワーク良く、いろんな出会いを見つけることができる。
○ また、こういう人なら、周りの人が「次は通訳の勉強をしない?」と、必ず誘ってくれるはず。
2年目に、通訳の勉強をする。
○ ひきつづき、手話サークルや講習会に通う。
○ 地域の手話通訳者をめざして、まずは、がんばる。通訳者向けの勉強会もあるので、そういうものを教えてもらって、積極的に出かける。この場合、頼りになるのは、地域で手話通訳活動をしている聞こえる先輩。ぜひ、遠慮せず、いろいろ質問してみよう。
○ なお、地域の手話通訳・・・といっても、大きく2種類ある。
① 東京なら、世田谷区・杉並区・・・など、自分の住んでいる区、全国的に言うと○○市などの地元自治体の登録通訳者を目指す。もよりの、市町村役場の福祉関係の課に問い合わせると、適切な連絡先を教えてもらえる。
② また、その上には、都道府県単位の、登録手話通訳者というのがある。全国の都道府県では、県庁を中心とした機関で、全県単位の通訳制度を設置しているところが多い。順番から言うと、市町村や、区の登録通訳者を経て、その上の都道府県単位の通訳者を目指すことになる。
○ しかし!!ここで、①に気を取られすぎると、さらに1年使ってしまうので、2年目は、①②を同時に目指して動く。そして、通訳者向けの講座に、いろいろ通ってみる。(そういう講座は、市町村や、区、県などの通訳仲間で必ず開いてくれているので、それを探し当てよう。)
○ その中で、身近な手話通訳士に出会う。偶然会えなければ、「手話通訳士になりたいんです。先輩の手話通訳士の方は、どこにいますか?」と、周りの人に尋ねてでも会う。なんせ、現在、全国で現在3600人程度しかいない手話通訳士。偶然などを待っていてはいけない。自分で会いに行こう。(地方に行けばいくほど、手話通訳士の人は、期待されているし、地域の手話通訳活動の柱に立っている人がほとんどだから、ちょっと尋ねれば、すぐ見つかるはず。だから、必ず、見つけ出す。)
○ 本物の手話通訳士に会えれば、手話通訳士になるにはどうしたらいいか、適切なアドバイスを必ずくれる。東京にある、社福)聴力障害者情報文化センターに尋ねれば、手話通訳士試験の過去問題も手に入る。
○ そして!! そこまで進んだら、けして、一人で頑張らず、お互い手話通訳士を目指す仲間と一緒に、試験勉強をする。(そんな仲間をどうやって見つけるの?と聞く必要はない。ここに至るまでに、必ずいろんな人に出会っているはずだから、仲間はすでにいる。笑)
○ 手話通訳士試験は、実技と、ペーパーテストがある。実技は、地元の実地学習で頑張る。ペーパーテストは、仲間同士で、過去問題なども解き合いながら頑張る。わからないことができたら、必ず、手話通訳士の先輩に相談に乗ってもらう。
○ 地元の枠を一歩出て、県単位の人脈を見つけることは、手話通訳士を目指す人には、かなり有効。ただし、手話学習のために、県内を遠くまで移動しなければならない場合も多い。県庁所在地まで、毎週通うことも必要になるかも。人によっては、宿泊で勉強会に参加している人などもいると思う。
・・と、ざっと、これで2年です。
なお、私もそうですが、大学時代、ろうの友人ができて、毎日手話で話したり授業の通訳をしている人は、手話通訳士になる可能性が高いことも添えておきます。
なお、最初に戻って、お金の計算もしましょう。
☆ 手話サークル毎週1回、手話講座毎週1回、(カルチャーも、週1回行けるなら行く)/交流のお出かけ毎週1回(イベント以外、ろうの友達と街に出かけるものも含む。) → これで、最低でも、1週間のうち3~4日手話に触れる。その都度、サークルや講習会などの終わりには、必ずお茶に行ったとして、1回1000円~2000円くらい。
☆ その他の土日のお出かけが、安く見積もっても1回5000円(ろうの人と一緒に映画などに行けば、おやつ代や映画鑑賞券、テーマ―パークに行けば、入場代などがかかる。飲み会などでも、3000円くらいは払うことになる。)
☆ この合計で、だいたい1週間1万円。1カ月で、4万円。年間50万円くらい
☆ このほかに、遠方の、手話通訳問題研究会や、ろう者大会に行くと、参加費や宿泊費、出かけた先でのこづかいも、かかる。笑 こういったものに、2カ月に1回、5万円払ったとして・・・・ 年間、30万円。
☆ カルチャーの授業料も、含めると、だいたい3か月で2~3万。年間10~12万。
☆ これらをすべて合計すると、年間90~100万円くらい。
☆ 2年目も同じ。
これを、必死の勉強ではなく、楽しんで2年間続けられれば、手話通訳士にならずとも、手話事情やろうの人のことも良くわかり心にも身にも入ってきますね。こういう方は、豊かな手話の話し手になることでしょう。
一方、期間・費用については、手話通訳を目指す、専門学校でも同じ。こちらに通っても、週5日くらい、2年で卒業できる。ろうの先生も、耳の聞こえる通訳者の先生もいる。
これもやはり、授業料は、年間7~80万円から100万円くらい。( 国公立なら、10~20万円=国立リハビリテーションセンター(埼玉県) )
だが、専門学校は、全国的にも数が限られているので、必ず、一人暮らしを強いられると想定すれば、授業料のほかに、一人分の家賃・生活費等が加算されることになる。月15万円くらいを予定したとして、1年で180万円くらい。2年で360万円くらいの出費が、さらにありそう。節約上手なら、もう少し抑えられるか?笑
それはそうとして、もちろん、学校に通えば、最新情報ももらえ、手話学習のツボも外さないという点で、メリットは大きい。
ただ、ここには、一つ落とし穴もある。学校に通って、よく失敗するのは「≪授業に出ただけで、勉強した気になり≫、実際のところ、手話が意外に身についていない。」という事態に陥ることだ。平たく言えば、自分の努力をおこたれば、どんなに毎日学校に通っても手話は下手なままだということだ。
手話は、言葉の学習なので、先生の話を見ただけ、聞いただけで、終わりではない。自分と相手が話し、通じ合えて、はじめて習得したといえる。単に単位修得のために出席日数をかせいでも、手話自体が身についていなければ、手話通訳士にはなれないという点について、肝に銘じておきたい。
専門学校に行く気なら、習ったことは、次の日には、すべて暗記して人に説明することができる。学んだ手話は、その日の晩、体が覚えこむまで、何度も自分で特訓する。そういう気持ちがないと、貴重な時間が無駄になる。
せっかく、学校に通うなら、ぜひそういうことも心がけ、自分の体に、手話をしっかりつかんでほしい。
そんなわけで、手話通訳士を目指すなら、実際に手話ワールドに入り、聞こえない人や通訳者と、たくさん出会うということが、最高のテキスト。これが、本気の2年です。
どうでしょうか?
さて、こうしたことを書かせてもらいながら、私はいつも思うことがあります。
上記の文章を全体的に見渡すと、結局、手話通訳士を目指すということは、英語などの外国語通訳を目指すのと、同じ過程が必要なことが、わかってきます。
手話通訳士になるには、外国語大学に通うとか、海外留学するとか、それと同じようなイメージで取り組んだほうが、自然なのかもしれません。まずは最初に、言葉のシャワーを浴び、その言語環境を体感する。次に、それをベースに、通訳の仕方・あり方を学ぶという流れです。
これは、外国語を学ぶ際の王道であり、こうしたことは、机の上の勉強だけでは、身につけられないこともたくさんあります。
現在、外国語通訳として活躍しておられる方は、みなさん、学校やテキストだけで学んだ語学でなく、実際に留学などをされて、相手の国の言葉を、文化も含め丸ごとナチュラルな環境で身につけられた方も多いかと思います。そういうベースがあって、はじめて、2つの言語の間を行き来する、通訳者になっておられるんですね。
手話学習では、もちろん、障害者の福祉・法律・制度なども習いますし、現場ではそういった理解も、とてもとても大切です。でも、たとえば、ホームヘルパーとか、専門学校で福祉の資格を得るなどに比べると、さらにもう一歩「情熱」や「言語や通訳能力そのもの」が、求められそうです。
若い方なら、来年の進路なども、そろそろ考える時期ですね。
ぜひ、選択肢の一つに、「手話」!! 考えてみてください。
なお、常にお伝えし続けていますが、「手話を学ぶ」ことと「手話通訳者を目指す」こととは、同義語ではないと私は考えます。言葉や文化、人との出会いは、まず心から。手話もまた言語の一つとして、人と人が思いを伝え合い、コミュニケーションを取り合うためにあるもの。まずは、通じ合う喜びあっての学びだと思います。そこは、外さず、ぜひ、もっとやれそうだと思う方は、手話通訳士(手話通訳者)にチャレンジしてみてください。
今日も、長文を読んでいただいて、ありがとうございます。
南 瑠霞 (手話通訳士600番〜手話通訳士名簿をみると、本名がわかります。汗笑)