JーWAVE「聲の形」手話の制作エピソード / 南 瑠霞 「JAM THE WORLD」2019.9.19(木)放送分文字情報
JーWAVE「JAM THE WORLD」「KODANSHA CASE FILE/講談社」
ナビゲーター:グローバー(ミュージシャン)
(グローバー)
ここからは時代を映すニュースなキーワードを あなたの記憶にファイリング「KODANSHA CASE FILE」。
来週9月23日は、手話言語の国際デーです。そこで今週は改めて、手話について詳しく紹介しています。
お話を伺うのは、手話通訳士・手話パフォーマーの、南 瑠霞さん。南さんは、手話を題材とした多くのエンターテイメント作品にも関わっています。こうしたものを入り口に、手話に興味を持つ方も多いということです。
木曜日の今日は、南さんが携わった京都アニメーション制作、耳の聞こえない女の子が重要な役割で登場する映画「聲の形」。制作エピソードについてお話を伺います。南さん、よろしくお願いします。
(南 瑠霞)
「私たちは、手話パフォーマンスきいろぐみという手話の劇団を立ち上げて、様々な舞台活動をしたり、例えばアニメ「聲の形」とか、ドラマ「オレンジデイズ」、ハリウッド映画「バベル」などの手話指導に入らせてもらったりしています。
私たちの活動の柱というのは、手話を広めたいということよりも、『聞こえない人が持つ豊かな言葉 “手話” が、いかに多くの聞こえる人にも役立つか』ということを情報発信していければ素敵だなと思っています。
「聲の形」については、本当に大きな被害があり、関わった私たちとしても、悲しい思いがあり、それ以上に悔しく思っています。
みなさんに、とてもとてもお伝えしたいのは、、、
私たち手話指導チームは、上がってきた映像の中で、(作品の)手話をよりよくしたいと思うので、「この絵が違う!」「あの絵が違う!」「ここはもう少し直して!」と、何度も何度も(アニメーターの皆さんに)お返しするんです。そうやって、1回ずつ返すんですけど、また、1回ずつその絵は、じゃあこれでどうだ?こんな風にしたらどうだ?と、全て返ってくるわけです。
山田監督がおっしゃっていたのは「一つの手話の単語で直されたのは、最高で8回というのがあったのよ。」とおっしゃっていました。笑
私たちは、そういうことは考えても数えてもいなかったのですが、そんなにNGを出していたのか〜と思ったのとともに、そのNGは、8回全て絵が直されて返ってきていたということです。そして、単語は一つだったわけではないので、100近い単語を、全てアニメーターの方が、たくさんたくさん作り、たくさんたくさん直し、そして仕上がったものが、アニメ「聲の形」となって、いま多くの方が見ておられるということになります。
私は、作り手の1人として「裏でこんなに苦労しました」と話すのは、実は作品を世に出すに当たってルール違反だと思うんですね。その苦労を話さなくても、みなさんが感動してくださること。これが、おそらくアニメーターのみなさんにとっても、私たちにとっても、勝負どころであり、夢でありロマンだと思ってこの活動を続けています。しかし、今回に限っては、このことはとてもお伝えしたいと思っています。
聲の形では、例えば一つ、みなさんに覚えていただきたい手話があります。
両手の小指を立てて、自分でからませてみてください。
これが「約束」という手話になります。「きっと」「必ず」などの意味を持った手話です。この手話も、聲の形の中に出てきます。これが本当に、その意味を持ち、思いのこもった表現となって映像に現れているかと、私たちも何度も何度もチェックをし、アニメーターの皆さんに何度も書き直していただきながら、みんなの力を結集して、アニメ映像が出来上がっているということになります。」
(グローバー)
手話は言葉ですから、思いのこもったものになっているかを、ちょっとした動きの違い、手の影の違和感といったものまで、何度も何度も直して、たくさんの京都アニメーションのスタッフが、努力してくれたんだということですね。
非常に残念な事件で、「聲の形」に携わったスタッフの方も巻き込まれ、「あまりに悔しい」と南さんもおっしゃっていましたね。
「聲の形」は、第40回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞も受けてまして、もうすでにたくさんの人の目に触れていますが、改めて多くの方に見ていただきたいと思います。
そして、こうした作品などもきっかけに、手話に興味を持っていただきたいなと思います。
南さん、今週1週間、ありがとうございました。