場面に応じた手話通訳を!笑
先日、とある政治家の方からの依頼を受け、街頭演説の手話通訳を承りました。
写真では、この方を一応目隠ししていますが(笑)この方ご自身は、もちろん顔出しOK!笑
「いつでもどこでも自分がいたことは、公開してくれ!」とおっしゃっていますが、今日は、手話の話なので、一応OFF ということで。笑
・・といっても、これがどなたかは、ほとんどの方にはわかるとも思うのですが・・・笑笑
この時の手話通訳は、私ともう一人のベテラン手話通訳士の方と二人で組んで15分交代で行いました。また、この写真は私ですが、みなさんが、いろんなSNSなどで「手話通訳士の勢いがすごかった。」「ご本人のYさんとおなじだった。」「力強かった」などとレポートしてくださっています。私だけでなく、もう一人の方も、大きくはっきりした手話で、集まった皆さん大ぜいに届くよう手話通訳をしました。
これは、どいうことだったのか・・・
ということについて、ちょっとお話します。
私たち手話通訳士(者)は、通訳の際には、話の内容の正しさだけでなく、話し手ご本人の口調・語調や雰囲気、勢いごと通訳してお伝えしたいと考えています。ですから、力強く話す方なら力強い手話で、細々と話される方ではおとなしい手話で、楽しい話では笑顔なども大切に、通訳をさせてもらっています。
この方は、当日、本当に力強く大きな声で、そこに集まった皆さん全員に届けたいという思いと口調で、また、会場の皆さんの反応も見ながら、みなさんがどよめけば、それを待ち、どなたかが「そうだ!」といえば、そこに目を向けながら話しておられたので、通訳者である私たちも、それをある程度再現できるよう努力して通訳しています。この方は、話もまとまっており、言い方がはっきりしておられた面もあり、それも手話通訳では、単語選びや表現の強さやメリハリに影響していると思います。
つまり、この日、私ともう一人の通訳の方の手話が「激しかった(笑)」のは、話しておられるご本人が、強く燃えていたからで、私たちが勝手にノリノリで、そのように手話を付けたわけではありません。笑
出回っている映像について、その辺も、理解しながら見ていただけると、さらに手話の見方も変わるかもしれません。ご参考にされてください。
また、私も、もう一人の方も、他の政治家の方やそのほか様々な方からのご依頼で、いろんな場面に、通訳に出向いています。
ほぼ、全国の通訳者の方は、政党などにも偏ることなく「通訳が必要だ」と意思表示された方のところに、平等に伺っているかと思います。
また、聞こえない方の要望に応じ、依頼された政党通訳に行っている方もおられます。
ですから、ほとんどの場合、皆さんが見ている政治の手話通訳者は「政党付きの通訳者」ではありません。
政治の通訳は専門性や、きちんとした政治・社会・国際情勢への理解も必要であり、誰でもができるものでなく、少し手話を学んだだけで対応できる内容ではありません。ですから、そうした通訳がきちんとできる資格や能力のある方が、呼ばれてその場に伺っています。それは何より、聞こえない方々に、その政見や動向を知るチャンスを広げるためでもあります。
ちなみに、現在、総理官邸、官房長官の横で通訳をしている方々は、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格を持ち、東京都の手話通訳者として登録されている方々です。
(WOWOWドラマ「トップリーグ」より)
話は、ちょっと変わって、私自身のことですが、私は、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格を持つ、手話パフォーマーであり、女優です。
最近、手話通訳士役を求めるドラマや番組も増え、政治などがテーマのドラマで、内容がずばり政治そのものであり、官房長官や総理の話を通訳する役をお願いしたいと、うちの事務所に依頼をいただくことも多くなってきました。そうした場面で、いきなり手話指導をして、ゼロから手話を覚えられる役者さんは 一般にいらっしゃらないからです。
上にご紹介しているのは、そんなドラマの一場面。
これは、官房長官付きの手話通訳の役ですので、私も、きちんと真面目な口調(手や表情の動かし方。ふさわしい単語を選んで)通訳をしております。笑
最初の、街頭演説 の通訳とは、明らかに雰囲気が違うのがお分かりになると思います。
(NHK紅白歌合戦~ゴジラ渋谷来襲 より)
以前出演させていただいた NHK紅白歌合戦〜ゴジラ渋谷来襲!の時も、同様に、官房長官付きにふさわしい、官房長官と同調した表情と表現に心がけています。
(やわらかいイメージが求められた 公的通訳)
一方こちらは、流れる音声も手話も「優しくわかりやすい解説女性」のイメージが求められた公的な通訳。
そして、下は、皆さんにいつも「大好き」「面白い」といっていただく「NHK〜LIFE 人生に捧げるコント」の、宇宙人総理の手話通訳士の役です。これは、いるはずのない架空の宇宙人総理のあり得ない話の、電波による光線攻撃シーンですので、当然、手話通訳士としても、総理の光線を手話で通訳しております。笑
(「NHK〜LIFE 人生に捧げるコント」の、宇宙人総理手話通訳士 より)
なお、いずれも、全ての手話は、内容はきちんと通訳しており、どれを見ても意味は正確にお伝えしています。
なんちゃって通訳をしているわけではありませんので、念のため。笑
私は、役者の1人でもありますが、基本的に手話通訳は、ご本人の口調や雰囲気ごと伝えられることが、大切なポイントの一つであると思います。
陰気な話し方の人につけた手話通訳が、元気でにこやかだったり、声も高々にお話しされているのに、手話通訳が大人しすぎたりしては、その内容は伝わりづらくなるように思います。
手話通訳も、言語通訳も、とても難しいことで、どれもこれも、全てうまくできるわけではないですし、どれが正解かも、その場によりその時代により変わりつつあります。私もその度色々迷いながら、工夫しながら、通訳に努力を重ねています。
ちょっとそんなことにも目を向けてみると、取り組みも興味深く、見る方の関心も深まるのではないかと思い、今日の記事を書きました。
私の意見は、手話通訳論の全てではないとも思いますが、参考にしてみてください。
本当に、ありがとうございます。