手話の名前
ときどき、学校の先生が、「ちょっと手話を覚えてこどもたちに教えてあげたい。まずは、子供たちに手話で自分の名前を覚えさせたいんです。」
と、相談に見えます。
ところが・・・
実は、手話の名前は、数年学んだ手話のベテランでないと、教えてあげられないことがたくさんあります。
手話の名前は、単に音を表す指文字などから できているのでなく、いろんな手話単語の組み合わせや、その短縮形や、歴史に由来のあるものなど、手話の要素が凝縮されている表現にあふれているからです。
「佐々木」や「斎藤」は、日本の歴史的人物「佐々木小次郎」や「斎藤道三」から。
「藤」は藤棚に垂れ下がる花。
「井」や「田」は漢字の形から。
「島」は島の陸地と周辺の海面の組み合わせ。
「佐藤」は、「砂糖」のダジャレから。
「寺」や「村」など、そこで使う器具の特徴から表現するものもあります。
人の名前は千差万別。実は、人の名前を教えることこそが、とても難しく、手話をちょっとかじっただけの初心者の学校の先生には、教えてあげられないものが、たくさんあります。
手話の歌もしかり、手話単語を並べるだけでは、手話文や意味の通った歌詞にはならず、各小中学校では、手話経験のない、または浅い経験しかない先生方だけで頑張れば、多くの間違いを広めてしまいかねない事態に陥ります。「子供たちに手話を教えたい」と願う先生方には、ぜひ、地元のろうの方や通訳者の方をお呼びいただき、「本当に通じ合える良き手話」の指導に取り組んでいただきたいものです。
さて、南の通う保育士の卵たちの短大でも、秋の手話指導が始まっています。2回目の今週は、学生たち全員の名前を、みんなで覚えました。
地域独特の手話ネームもあれば、小林・高橋・山本・鈴木など、全国でも最も多いといわれる名前の人もいます。
互いが、手話で名前を覚えあい、様々な表現も身に着け、特に盛りだくさんの指導の1日となりました。
ちなみに私の名前「南」は、「うちわ」をパタパタあおぐしぐさが語源です。「うちわ」「暑い」「あおぐ」「夏」「南」は、すべて同じ表現ですので、一度覚えると、いろんな場面で使えます。笑
奥深い手話の名前を、歴史なども紐解きながら覚えあう授業は、もとても楽しく。みんな「へえ!!」「そういう意味でこの表現なのかあ。」「私の名前は、『鈴』を振って『木』の幹を表現するのかあ」なんて、一つ一つ感動しながら、あっという間のひと時でした。
もちろん、このすべて1コマの1時間半は、声を使わず絵や身振りいっぱいに、皆さんに指導させていただいています。
中庭の秋のもみじは、まだ、濃い緑色です。