手話をする時ネイルをしてはいけないの?


「手話を学ぶ人は、ネイルをしては、ダメなんですか?」
という質問をいただくことがよくあります。
どうも、地域の手話講習会などでは、そう指導されているところもあるようです。

これについてちょっと考えて見ましょう。
私は、手話をする時のネイルについては、TPOがあり、それによって、全く判断が変わると思っています。


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特に通訳の場面では、色々考えなければいけないことが多いと思います。
例えば、区市町村などの公式行事や式典、また、官公庁や企業様の案件で手話通訳を承るときは、当然、薄いピンクや肌色に近いもの以外のネイルはできないと思います。お相手が、真面目な意図で通訳を依頼してこられるわけですから、このような場で、赤など派手な色のネイルをすることは、ルール違反です。

もちろん、こうした場面では、通訳者は、黒などのスーツ姿で、結婚指輪以外の指輪も通常つけませんし、大きなネックレスやイヤリングも外します。メガネも光ると目の表情が見えづらくなるので、はずす方は多いと思います。

(時代も変わってきましたので、小さな目立たない、ピアスまで外すということは、少なくはなってきています。特に真珠などであれば、問題ない場合も多いようですが明らかにキラキラしすぎて、そちらに目が行ってしまうようなアクセサリーは外すことがマナーです。笑 手話は、手や顔の動きや表情から、言葉を読み取るので、その近くに意図しないアクセサリーなどの情報がチラチラ入ると、本来の通訳の中身が目に入ってこなくなる場合もあるので、注意をしたいところですね。)

でも、例えば、これが、結婚式の通訳なら、そのルールは緩和されることも多いように思います。花嫁さんより目立つことはしてはいけませんが、少し可愛いネイルをしていたり、胸に花のコサージュをつけていることが、お祝いを意味するので、むしろ、歓迎されます。そういう場面で、あまり地味すぎる姿は、場にそぐいません。笑

このほか、うちのような手話パフォーマンス集団では、「派手にする」ことがお仕事ですので、華やかな司会の場面や、パフォーマンスの舞台では、むしろ、キラキラのネイルをつけていた方がいい場合もあります。笑笑

一方、社会常識として、私も通常の手話に関係ない司会のお仕事で、事前に注意を受けることはあります。
公式なスポーツの司会などでは、派手なネイルや、南が大好きな赤髪は当然ですが、禁止。また、某首都圏大型テーマパークの、キャストの皆さんも、黒か目立たない茶髪、そして、ネイルも薄いピンクや肌色、透明などのもの以外は、禁止。公的に、身なりを求められる場面では、手話に関係ない場合でも、ネイルなどには気遣わなければならない場所はたくさんあります。

逆に意外に、しっかりネイルをされているのは、結婚式場の女性スタッフ。こちらは、可愛いピンクや金色で、お祝い事をイメージするカラーのネイルや、立体の真珠のネイルをされている方を、多くお見かけします。逆にこちらは、清楚な中にも華やかさがあり、これから幸せの時を迎えるカップルから見ても、夢が持てるいでたちをしていなければならないということだと思います。
これも、素敵なことですね。

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それから、もう一つ、 こうしたことは、全て社会的な意味のあることで、通訳や接客や、公的イメージを求められる場合のお話です。
個人が、手話を学ぶにあたり、どんなネイルをしようが、それは、私は、その方の自由だと考えます。

手話は、言語であり、私たちが使う日本語と同じようにその人が身につける言葉となります。
日本でも海外でも、若い女性を中心に、ネイルは大人気で、今や街のあちこちにネイルサロンがあるのはごく普通のこと。

例えば、これがろうの女性なら、「手話で話すのだから、ネイルはダメ」なんて言われたら、、聞こえないというだけで、ネイルなどのおしゃれが全部できない!ということになってしまいます。大汗
こんなことは、あり得ない話で、おしゃれに興味のある方なら、ネイルにもどんどんチャレンジするのは、自然なことだと私は思います。当たり前ですが、私のろうの友人たちの中には、ネイルをしている人はたーくさんいます。


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それでなんですが、では、なぜ、手話の講座などでは、「派手なネイルは控えてください」と多くの方が、アドバイスを受けるのか・・というと・・・

それには、ちょっと訳があります。
地域では、「行政が税金」を使って、できれば「通訳者がたくさん育って欲しい」なーと願って開かれている講習会が多いという事情があります。
そんな中で、皆さんが学んでいるのは、最初から「通訳者としてのマナー」であることが多いからです。

「もしあなたが通訳者になってくれるなら・・」という前提で、手話指導を行う場合、ネイルやアクセサリー、また、通訳をする際の服装については、触れておかなければ、いざという時、当人も聞こえない人も困ってしまう場合が、出てくる訳です。

いざ、公的な通訳で、何も学ばないまま、通訳者が派手な服装やアクセサリーをつけて舞台に立てば、関係者にも、又ろうの人にも迷惑をかけてしまいます。そうならないためには、ぜひ、最初から、それを知って欲しい。。。そう願う講師や行政が、そのように指導することは、よくある例です。

「いや、私はあくまで一般人ですから!!通訳になるつもりなんてないんです!!」と、あなたは思うかもしれませんが、そこには、地元の「税金」が使われており、それらの講座は、心から「通訳者の育成を願っている」場合がほとんどです。だからこそ、無料だったり、テキスト代だけを払えば、2年でも3年でも、授業が受け続けられるよう、計画が作られています。

もちろん、手話を知る人を増やしたいという裾野を広げる意味では、様々な方々に、様々な思いを持って、気軽に楽しく手話を学んで欲しいと願うのは、多くのろうの方や通訳者の気持ちでもありますが、地元の講習会には、それなりの位置づけや意義もある訳です。
そんな中で、あなたがどう手話を学ぶかは、自分の心で、ちょっと考えて見てください。

それでも、自分は楽しくネイルをして手話を学びたい!と思うなら、それは本当に、反抗でもなんでもないし、正しい考えの一つです。
だから、そこには自信を持って、堂々とネイルを可愛く可愛く作っていくのも一つの手。それでも、楽しく一生懸命手話を学ぶ姿勢でいれば、ちゃんと周りのろうの方々は、見てくれているはずです。笑
だって、おしゃれは、大切ですから!!
ただ、ちょっとだけ、相手にも、立場があるということだけ、知っておいていただければ十分です。

それに私、これからの時代は、またもっともっと変わって、可愛いおしゃれをした手話通訳者も、たくさん求められる時代がくるとも思っています。
正しさの基準は、時代によって変わります。相手や自分がどんな立場なのかな〜なんて、考えるチャンスだと思えば いろんな考え方に出会うのも楽しいですね。
そして、いよいよ本当に、自分が通訳者になることがあれば、その時には、クライアント様の意思やイメージを大事に、お仕事をすれば良い訳です。

私も、いつも、自分のステージでは赤い髪。赤いネイル。
官房長官の横に立つ手話通訳士の役をいただけば、黒髪に戻し、結婚式の披露宴の司会では、立体のネイルをつけて、、、と様々な場面で、装いを変えながら、手話の活動をしています。

手話とネイル それは、TPOによって、様々に条件が変わります。
誰が正しいか、間違っているか、そういうものでもないということですね。


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とにもかくにも、特に女子に、おしゃれは大切。笑
ネイル大好きなあなたは、手話を学ぶからと言って、無理にネイルを辞める必要はありません。
ただ、相手には相手の立場がある!ということです。
そこがわかれば、細かいことを、どうこういうより、まずは、みんなで楽しく手話を学び合い、通じ合い、心が豊かになることの方が、大切なんじゃないかな?
この秋も、みんなで元気に手話で話しましょう。

いつもほんとうに、ありがとうございます。
南 瑠霞 (手話通訳士600番)



※ 写真は全て、私が自分で描いたネイルです。下手くそですが、好きなんです。笑 
本格的なものは、プロにお願いしないとうまくできませんが。笑笑
やはり、ネイルは楽しい!!と思います。