小劇場の世界観と手話
2021年は、秋から3本のお芝居に、手話通訳として参加させていただきました。
本格的な小屋芝居にこだわった、作品作りに情熱をかけたチームの演劇です。
大阪時代から、生瀬勝久さんのいたそとばこまち、筧利夫さん・古田新太さん・橋本さとしさんなどがいた劇団☆新感線!!、このほか、南河内万歳一座などなど、関西の元気のいい劇団のお膝元で、様々な作品に触れてきた私。東京にきてからも、寺山修司さんの天井桟敷などの作品をよく拝見しました。
そうした時代を経て、しばらくお芝居の世界から遠ざかり、その後手話を通じて、自らも舞台を作り、また最近ではテレビや映画の出演のほか、アイドルの皆さんの舞台のお手伝いなども多くなってきています。
今回の作品の数々は、私の青春時代をなぞるような舞台でもあり、あの日同様、舞台人たちが愛情とこだわりを持って、想いを紡いだ世界感が浮かび上がっていました。その傍らで手話で演じさせていただいた時間は、大変光栄で嬉しく、貴重なものとなりました。
脚本や演出や照明や音楽や役者さんたちが、みんなでそれぞれの役割を全うし合おうとする底力に溢れた空間は、思いなくしては描き出すことのできないものであり、そこには、私たちが生きているこの時代・世代・国・言葉などの、まさに真実のひとかけらがある。扉を開けて席につけば、登場人物たちが、あたかも昨日もそうであったかのように動き出す。作り事の世界が、作り事ではないものとして、本当の姿で展開していく。これが、小屋芝居だったと、改めて、魂を揺さぶられるような時間でした。
芝居は命である。セリフは心である。耳に聞こえる心地のいい日本語も手話も、人の命を預かる大事な言葉である。
小劇場の芝居はまた、街ゆく人々の生命の泉でもある。
プロデュースを手がけた名取事務所のみなさん、演出家の皆様、ご一緒させていただいた役者の皆さん、そのほか多くのスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
劇場では、お芝居を見にきてくださった聞こえない方、また、手話があると気づいて、チケットを申し込んで駆けつけてくださった手話ファンの皆さんからも、お声がけいただき、感謝しております。
コロナ等様々な事情から、大々的な呼び込みもできない中、舞台に会いにきてくださった方々がおられたことは、大いなる励みとなりました。ありがとうございます。
2021年9月「灯に佇む(ひにたたずむ)」
がん患者の心情に寄り添う、町医者のストーリー。
「がん患者の死が負けだと言うなら、人は皆最後に死ぬ時、負けなければいけない。」
患者の死を看取った医師の一言に、ハッとさせられる作品でした。
2021年11月「女は泣かない」
韓国が原作の作品。心理カウンセラーの女性が、自分のトラウマと向き合い、大事なものは何かを辛い出来事の中から見つめていこうとする、刑事サスペンス。
2021年12月「4 Arts 4 Live」
3つの童話のオムニバス。昭和時代の物語が、3次元の朗読劇となって、令和のこの日に蘇る。時を超えて、過去の予言のように今の時代に重なる3つのストーリー。
「4 Arts 4 Live」では、演目中、アーティストの方が刺繍を差し続け、作品と同時に、1つの作品が出来上がります。