合格率9.6% 手話通訳士合格発表!!
今年も、1月31日に手話通訳士試験の合格発表がありました。
受かりました!!残念でした!など、私の周りからも、いろんな報告をいただいています。
皆さん、頑張ったことと思います。
手話通訳士試験は、全国でも会場が限られており、地方の方は、試験のために、泊まり込みで会場のある都会の街へ出かけるなど、なかなか大変な一面もあります。
合格された方も、今回上手く達成できなかった方も、試験勉強や試験当日の健闘、本当にお疲れ様でした。
今年の試験会場は、宮城・埼玉・東京・大阪・熊本。この地域から遠い方は、本当にご苦労されたことと思います。合格者も、埼玉・東京・大阪に集中しており、試験地までの距離が、そのまま受験を目指すみなさんの意欲の持ちやすさにもつながっているように思います。
それだけに、今回の、宮城・熊本の合格者の皆さんもまた、地元の皆さんの応援の声を背負っての、ある意味責任の重い受験をされた方もおられたかもしれません。
本当におめでとうございます。
今年の合格率は、受験者数1071名。合格者103名。合格率9.6%。
変わらず、やはり難易度の高い試験と言われているようです。
正直に自分の意見を言わせていただけるなら、合格しやすい方には傾向があるように思います。
話し言葉の日本語が、適切にさまざま扱えること。
聴者の通訳者仲間より、付き合うろうの友人が多いこと。
資格を持つ前から、積極的にさまざまな現場で自らいろんな活動をされていること。
それなりに、毎日手話に触れていること。手話やろう者のワールドに日々ひたっていること。
こうしたことが積み重なると、手話通訳士試験の合格は、グッと近づく・・というより、こういう方は、自然に合格する傾向にあるように思います。
まさに、言葉は、習うより慣れろ。本当のナチュラルな言い回しは、テキストや授業の中にでなく、聞こえない方々の日常会話の中に溢れています。
それが身についていれば、周りから自然に、手話通訳士(者)としての活躍を求められるようになるとも言えるかもしれません。
また、手話通訳士の資格をとったからと言って、その日から、天才通訳士になれるわけではありません。多くの人は、その後いろんな現場に立って、いろんな失敗も試行錯誤もして、そして、少しずつ成長していかれます。
そんな中、私が今注目しているのは、20代の合格者と、60代の合格者の皆さんです。
手話通訳士は、現在20歳以上(受験日の属する年度末までに20歳に達する人を含む) の方に、受験資格が与えられています。基本的に成人として認められる年齢から、この試験を受けられることになります。時に聞こえない方の裁判なども扱う通訳は、若すぎる年齢では、さまざまなケースに対し判断力が成熟していない場合もあり、それらを超え、適切な通訳ができるであろう最低年齢が20歳と定められているのです。
ですが、実は、つまり!私たちは、この20歳になった瞬間にこの試験を受けて、合格できるチャンスがあるということでもあります。
多くの人は、大人になってから、手話通訳者になる勉強をされていると思いますが、遅くとも18歳で手話を始め、学生のうちに、聞こえない人たちの行事などにいっぱい参加して、「勉強ではなく」「遊びまわって」手話に触れて話せるようになれば、およそ2年で、意外に「楽ちんに」手話通訳が、できるようになります。
遊んで学んだ手話はとても楽しく、また若さゆえ、たくさんの吸収力があり、そういう人はあっという間に成長していきます。
私自身もそうでしたが、まだ通訳士資格のなかった時代でも、大学に入った年から、聴こえない学生といっぱい話し喧嘩し、遊びまわって手話を覚え、2年が過ぎた20歳でそのまま府や県の登録通訳者に合格した人は、たくさんいます。通訳者になろうとすること以前に!楽しく遊ぶこと。それが意外にも語学の上達を助けます。それができるのが10代の若者なのです。
手話通訳士を目指すなら、学生時代から。これは、おすすめのコースの一つです。何よりとっても!楽しい!!笑
私の周辺でも時々見かけますが、小学生の時から、聞こえないお兄さんお姉さんたちと触れ合い、中学・高校時代に手話のワールドで目一杯遊び!!大学に入って18・19歳で、通訳の仕方を勉強してしまった若者なら!
もう、20歳になったら通訳士試験を受ける以外、やることはなくなってるかもしれません。笑
今、手話通訳士の資格を使って仕事をしている人は、いろんなところにいます。
各都道府県の、聴覚障害者向け情報提供施設。遠隔手話通訳や、電話リレーサービスのオペレータ。このほか、大手企業では、聞こえない人の雇用に向け、手話通訳士の資格のある人を正社員で求めているところもあります。このほか電話などの通信機器の受付窓口でも、手話通訳のできる人は貴重です。
このほかもちろん、各都道府県の登録手話通訳者として活躍されている方もたくさんいます。今では、コロナのテレビ会見などで各県知事さんの横に立つ、手話通訳者の方を見ない日はありません。
手話通訳士の資格を持ち、こうした仕事について、月20万円〜30万円程度の給与で、働いている人は、私の周りにも、たくさんいます。大金持ちにはなれないかもしれませんが、自分の身を立てるには、一定の安心が得られます。
このほか、私たちのように、手話エンターテイメントの仕事をしている人も、首都圏にはたくさんいます。
手話パフォーマンスきいろぐみのメンバーの中にも、NHK手話ニュースのニュースキャスターになっているろうの人もいますし、手話でさまざまな司会をしている人。私もまた、舞台活動のほか、ドラマやアーティストの皆さんなどの手話指導をすることで、多くの人と触れ合いながら、仕事をさせてもらっています。
手話通訳士の資格は、今!生活できる仕事につながっています。
そうした資格を生かすなら、20代のうちに取得することは、あなたの役に立ちます。
若いみなさんには、手話を楽しく話して身につけて、自分の将来にも生かしてもらいたいなあと思います。
資格を取るという目標がなくても、そういう出会いは人生を豊かにしてくれるし、異言語・異文化を若いうちに体験することは、素敵なことだと思います。
10代のあなたもぜひ、手話を学んでみてください。
そして、もう一つ。私は歳だからと、さまざまなことを諦めているあなた。私の周りには、最近、60代で手話通訳士になり、今、最前線で活躍されている方もおられることをお伝えしておきます。
この方は、60歳になって通訳士になり、初めはなかなか現場に馴染めませんでした。思うように内容がつかめない、適切な表現が出てこない。現場での咄嗟の判断がしづらいなど、資格を得て1〜2年、ハラハラするような通訳をされていました。
ところが、私の先輩に当たる方が、その方をとても励まされ、うまくできない時はカバーし続けて、何度も何度もいろんな現場を提供されました。ご本人は、その中で、また現場の大きなトラブルにも直面されました。でも、ここでやっぱ歳じゃんと思うのはまだ早い!私がお伝えしたいのは、そのあとです。
ご本人は、はた目にも、多くの苦労をされたのに、それにめげることなく、とても頑張って、決してやめるとはおっしゃいませんでした。次の機会も、またその次の機会にも、通訳に立ち、その結果、たくさんの経験を積んでいったのです。いつしか、その方は、手話表現も上手くなり、またいざというときの判断も、自信を持って行えるようになってこられました。
私はこの方を見続けてきた数年で「人の成長に、年齢は関係ない」ということを肌で感じました。
この方は、60歳になって手話通訳士になり、そして、ちゃんと、本物の通訳者となって活動を続けておられるのです。歳をとってから始めても、物事は成し遂げられる。それをこの方は教えてくださっています。
©️手話あいらんど&平見華子
手話通訳士になるとは、その入り口も、道筋も、また、資格を得てからの人生もさまざま。
そんな入り口に立った 合格率9.6%103名の皆さん。エネルギーあふれる現場へようこそ!!一緒に、大事に励まし合いながら、一歩ずつこの道、踏みしめていきましょう。
喜びと励ましをありがとう。おめでとうございます。
手話通訳士600 南 瑠霞
手話通訳士試験情報
■社福)聴力障害者情報文化センター
http://www.jyoubun-center.or.jp
■第32回(令和3年度)手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)結果発表
http://www.jyoubun-center.or.jp/slit/data/