手話の「同時通訳」と「映像手話通訳」の違い

ハローワークや警察庁、企業のイメージCMなど、さまざまな映像通訳をお引き受けすることがあります。


私たちは、講演会や会議などの同時通訳も、行っていますが、実は、こうした通訳と、映像通訳では、少し手順が違うのをご存知でしょうか?


もちろん、通訳作業をする中で、中身を理解して手話に翻訳・伝えていく方法に大きな違いがあるわけではありません。

しかし、その通訳の進行方法には違いがあり、かける時間も変わってくることを、ご紹介したいと思います。



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(同時通訳の場合、手話通訳者は、その場で多少つまずいても、同時に修正を加えながら、仕事を続行。話者の講演の終わりが通訳の終わりとなる。)



一般に、会議・講義などの同時通訳では、通訳者は、多少手話を噛んだり言い間違えたり、また、何かの拍子に咳払いをしたり、途中でコンタクトがずれて手が止まってしまうようなことがあっても、その場でどんどん修正しながら、内容を伝えていきます。

大きなミスがあった際は、次の休憩時間明けに、最初にお時間をいただき、「先ほどの通訳で、この点の理解がズレていました。××とお伝えしましたが、実際は〇〇が適切な言い回しでした。訂正してお詫びします。」などと、修正作業をおこなって、後半につなげたりしています。


こうしたことを、手話通訳で行なっているという事は、一般にはあまり知られていないことかも知れません。

確実に、内容を伝えなければいけない仕事ですので、間違いなども正直に申告し、その場で修正し、適切な処置をとることは、大切な作業の一つです。



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(映像通訳の場合、同じ内容が繰り返し配信(放送)されるので、つまづきや失敗は防がなければいけない。出演する手話通訳士の他に、同時にろう者手話監修者、または別の手話通訳士が映像チェックをおこなっている。NGが出れば、シーンは撮り直す。)



一方、映像など、同じ内容が何度も繰り返し放送や配信されたりする作品では、通訳のつまづきや間違いはNGとして取り扱います。

毎回同じ箇所でつまづきのある手話が放送されると、見る人も落ち着きませんし、そもそも、そこは、不適切な表現をしているわけです。そういった、元の伝えたい内容をさまたげる要素は避けなければなりません。

録画された放送に、噛んだ音声のナレーションや言い間違いがないように、手話でも言い損ないや間違いのないように収録されます。


手話通訳では、映像であっても、いったん耳に入った日本語を、手話に変える作業は同じです。でも、間違えたら、その場でやり直す。これが、一般的な手順となります。


令和になって、特に官公庁の映像では、出演する手話通訳者は、厚生労働大臣公認資格を持つ、手話通訳士であること。また、もう一人別の手話監修者(ろうの手話指導者・監修者または、手話通訳士)の立ち会いが必須となっています。


一般に、音声のナレーションなどでは、演出家やさまざまなスタッフも同時にその声を聞き、言い間違いなどに気付けます。

一方、手話の場合、チェックできる人材が少なく、出演者本人が、気づかず間違いを起こしている場合、指摘する人がいなくなってしまうためです。

これは、視聴者が快適で適切な放送や配信を見るためでもありますが、たった一人の手話通訳者に、言葉の責任を全て背負わせないようにするための配慮でもあります。


映像では、何度も繰り返し放送される言葉への責任も発生します。それを、さまざまな手段でカバーし合う方法が、求められるのです。


こんなふうに、同じ手話通訳でも、同時通訳と映像通訳では、ちょっと、方法が違ってきます。

手話に興味を持ってくださった皆さんには、こうしたことも、知っていただければと思います。


想いを伝える言葉「手話」。みんなで大切に守っていきたいですね。