手話あいらんどTVクロスカルチャー「手話でケンカができる幸せ!ろう者高齢者施設」
手話あいらんどTV クロスカルチャー!!
今回は、ろう者のいくみちゃんが勤める ろう者高齢者施設のお話。
年老いて、母語の手話でケンカできる幸せは、何者にも変え難い!!
(簡単な内容)
手話あいらんどTVクロスカルチャー!!
いくみです。聞こえません。
南 瑠霞です。聞こえます。
よろしくお願いします。
いくみちゃんの職場のお話です。
いくみちゃんは、ろう者高齢者の介護の仕事をしています。
高校を卒業してからずっとこの仕事です。
仕事に入ったばかりの頃、私の耳は聞こえていました。その後耳が聞こえなくなりました。
耳が聞こえなくなって、一般の高齢者の方々と、だんだん通じなくなってきて、今の職場は、ワンフロアー全てろうの方が暮らす施設で仕事をしています。
自分のフロアーは、25人くらいの、ろう者高齢者の方が暮らしておられます。
職員も、ろう者や、手話のできる聞こえるスタッフ。
手話の飛び交う職場です。
以前、聞こえる高齢者の施設では、実は、みなさんが耳が遠くなっておられて、多くの方を一度に呼ぼうとしても、気づいてもらえず、結局一人ずつ肩を叩いて呼んでいた経験があります。全員に、こちらを向いてもらうのに時間がかかっていたんです。
ところが、ろうの高齢者の皆さんは、逆に、みなさんが、一斉に振り向いてくれます。
聞こえないのになぜ?
ろうの方は、なんらかのアクションで呼ぶと、視野が広いので、たいていその気配をとらえてくれます。また、自分達が呼ばれていることがわかると、お互いにみんなが呼び合って注目するように習慣づいています。なので、20人くらいいても、誰か一人と目があって呼べば、他のみんなも一斉に声をかけあって、振り向いてくれるんです。こちらを、みなさんが、とても早く見てくれて、すぐに話が始められます。笑
また、一般の聞こえる方の施設では、ガラス張りの扉でも、閉まっていれば、向こうとこちらでは声が聞こえず、必ず開けて要件を伝えていました。
ところが、ろうの高齢者の皆さんは、扉の向こうとこちらでも、ガラス越しに目が合えば、手話で話してくれるので、座ったまま振り向けば、そのまま話せたりします。
これ、聞こえない人には、普通のことではありますが、聞こえる人から見れば、とても便利な一面だと思います。
ろうの高齢者の女性の中には、とても目の高い(見たものにすぐ気づく)方もおられます。
朝、ちょっと会っただけで、髪を切った?ネイルが変わった?髪飾りが可愛い!など、すぐに気づいて声をかけてくれます。
一般の施設にも、ろうの高齢者が入っていることがあります。でも、そういう場所では、ろうの方が一人だけということもあります。周りに、手話の通じる人がおらず、みんなが楽しそうに話していても、その輪には入れません。スタッフも、用事があれば、簡単なメモで渡してくれますが、それだけ。お風呂です。食事ですよ。とは、教えてくれても、他のいろんな話ができず、寂しい思いをすることもあります。そうなると、聞こえない人はだんだん孤立していって、話し相手のないまま認知症が進んでいってしまうこともあります。
今の職場は、みんなが手話で話しています。利用者の皆さんも、一生懸命頭を使って、その手話に反応して話しています。ぼんやりする時間がありません。笑
時には、話が過ぎて、もめたりケンカになったりすることもあり、スタッフが割ってはいるようなこともあります。笑
でも!よく考えてみれば、ケンカができるということも、幸せの一つのように思います。ひとりぼっちでいれば、手話もなく、ケンカをすることもできず、友達とぶつかることもありません。なので、こうやって喧嘩ができるのも、実はいい面なんだろうと思います。
今日は、そんなろう者高齢者の、みなさんの手話について、ご紹介します。
手話を学んでいる人も見てくださっていると思いますが、一つの日本語には、それに合う手話の単語が一つあるとイメージされている方も多いと思います。でも、手話は、同じ意味でもいろんな表現があり、10人いたら10人違う場合もあります。
同じ一つの意味で、ろう者高齢者がさまざまな表現をされる例です。(映像をご覧ください。)
・グーを下に下げる
・人差し指を振る
・鼻をつまむ
・手を擦る
・両手を拭い取るようにする
・指でアルファベットの「W」と「C」を組み合わせる
これは、全て、「トイレ」を意味しています。
今、手話辞典のようなものを見れば、「トイレ」は「WC」か「お手洗い」と表現されているものがほとんどです。
ろうのみなさんが勉強したわけではない、昔から受け継がれている表現は、身振りに近いものもあり、中にはお腹を軽く叩いて、トイレを示す人もいます。
本当に、多様です。
私たちは、それぞれの方の手話を覚えて、その人に合わせて表現を選んで、話しかけています。
もう一つの例です。(映像をご覧ください。)
・グーでほっぺを擦る
・指を広げて上からかけるようにする
・両手で背中をゴシゴシする動き
・両手の甲を、あごのところに持っていく
・グーで肩のあたりを擦る
これは、「お風呂」を意味しています。
それぞれの方が、さまざまな表現をされます。
グーで体を擦って、体を洗うという意味合いを示すのが一般的ですが、肩のあたりを擦る人、ほっぺを擦る人、また、シャンプーのように頭を洗う動きで表現する人、背中を洗う人もいます。
両手をあごにつけるのは、湯船につかる動き。シャワーを表現する人もいます。
アナタも、日本語1つに、手話の表現は「1つ」と思わずに、同じ意味を表すにも、さまざまな表現があることを覚えて下さいね。
これから、ろう者高齢者施設も、だんだん増えて来ると思います。手話の重要性・必要性を感じます。歳をとって、自分達の言葉である手話が、通じなければ、とても寂しい思いをします。生涯手話で周りの人と仲良くつながり合っていけることは、大事なことだと思います。
南も、日本語で暮らしていますが、歳をとって外国の施設に入るようなことがあり、周りに日本語の通じる人が誰もいなくなれば、閉じ込められたような気持ちになると思います。
ろうの人には手話。私には日本語。母語は生涯にわたって大事なものなのだと思います。
各地に広がる高齢者施設でも、手話が大事にされ、みんなが支え合っていければいいなあと思います。
また、お会いしましょう。
さようなら〜〜〜〜〜!!
提供:手話あいらんど手話教室
出演:いくみ&南 瑠霞
構成:南 瑠霞
編集:青木 孝二
今回は、ろう者のいくみちゃんが勤める ろう者高齢者施設のお話。
年老いて、母語の手話でケンカできる幸せは、何者にも変え難い!!
(簡単な内容)
手話あいらんどTVクロスカルチャー!!
いくみです。聞こえません。
南 瑠霞です。聞こえます。
よろしくお願いします。
いくみちゃんの職場のお話です。
いくみちゃんは、ろう者高齢者の介護の仕事をしています。
高校を卒業してからずっとこの仕事です。
仕事に入ったばかりの頃、私の耳は聞こえていました。その後耳が聞こえなくなりました。
耳が聞こえなくなって、一般の高齢者の方々と、だんだん通じなくなってきて、今の職場は、ワンフロアー全てろうの方が暮らす施設で仕事をしています。
自分のフロアーは、25人くらいの、ろう者高齢者の方が暮らしておられます。
職員も、ろう者や、手話のできる聞こえるスタッフ。
手話の飛び交う職場です。
以前、聞こえる高齢者の施設では、実は、みなさんが耳が遠くなっておられて、多くの方を一度に呼ぼうとしても、気づいてもらえず、結局一人ずつ肩を叩いて呼んでいた経験があります。全員に、こちらを向いてもらうのに時間がかかっていたんです。
ところが、ろうの高齢者の皆さんは、逆に、みなさんが、一斉に振り向いてくれます。
聞こえないのになぜ?
ろうの方は、なんらかのアクションで呼ぶと、視野が広いので、たいていその気配をとらえてくれます。また、自分達が呼ばれていることがわかると、お互いにみんなが呼び合って注目するように習慣づいています。なので、20人くらいいても、誰か一人と目があって呼べば、他のみんなも一斉に声をかけあって、振り向いてくれるんです。こちらを、みなさんが、とても早く見てくれて、すぐに話が始められます。笑
また、一般の聞こえる方の施設では、ガラス張りの扉でも、閉まっていれば、向こうとこちらでは声が聞こえず、必ず開けて要件を伝えていました。
ところが、ろうの高齢者の皆さんは、扉の向こうとこちらでも、ガラス越しに目が合えば、手話で話してくれるので、座ったまま振り向けば、そのまま話せたりします。
これ、聞こえない人には、普通のことではありますが、聞こえる人から見れば、とても便利な一面だと思います。
ろうの高齢者の女性の中には、とても目の高い(見たものにすぐ気づく)方もおられます。
朝、ちょっと会っただけで、髪を切った?ネイルが変わった?髪飾りが可愛い!など、すぐに気づいて声をかけてくれます。
一般の施設にも、ろうの高齢者が入っていることがあります。でも、そういう場所では、ろうの方が一人だけということもあります。周りに、手話の通じる人がおらず、みんなが楽しそうに話していても、その輪には入れません。スタッフも、用事があれば、簡単なメモで渡してくれますが、それだけ。お風呂です。食事ですよ。とは、教えてくれても、他のいろんな話ができず、寂しい思いをすることもあります。そうなると、聞こえない人はだんだん孤立していって、話し相手のないまま認知症が進んでいってしまうこともあります。
今の職場は、みんなが手話で話しています。利用者の皆さんも、一生懸命頭を使って、その手話に反応して話しています。ぼんやりする時間がありません。笑
時には、話が過ぎて、もめたりケンカになったりすることもあり、スタッフが割ってはいるようなこともあります。笑
でも!よく考えてみれば、ケンカができるということも、幸せの一つのように思います。ひとりぼっちでいれば、手話もなく、ケンカをすることもできず、友達とぶつかることもありません。なので、こうやって喧嘩ができるのも、実はいい面なんだろうと思います。
今日は、そんなろう者高齢者の、みなさんの手話について、ご紹介します。
手話を学んでいる人も見てくださっていると思いますが、一つの日本語には、それに合う手話の単語が一つあるとイメージされている方も多いと思います。でも、手話は、同じ意味でもいろんな表現があり、10人いたら10人違う場合もあります。
同じ一つの意味で、ろう者高齢者がさまざまな表現をされる例です。(映像をご覧ください。)
・グーを下に下げる
・人差し指を振る
・鼻をつまむ
・手を擦る
・両手を拭い取るようにする
・指でアルファベットの「W」と「C」を組み合わせる
これは、全て、「トイレ」を意味しています。
今、手話辞典のようなものを見れば、「トイレ」は「WC」か「お手洗い」と表現されているものがほとんどです。
ろうのみなさんが勉強したわけではない、昔から受け継がれている表現は、身振りに近いものもあり、中にはお腹を軽く叩いて、トイレを示す人もいます。
本当に、多様です。
私たちは、それぞれの方の手話を覚えて、その人に合わせて表現を選んで、話しかけています。
もう一つの例です。(映像をご覧ください。)
・グーでほっぺを擦る
・指を広げて上からかけるようにする
・両手で背中をゴシゴシする動き
・両手の甲を、あごのところに持っていく
・グーで肩のあたりを擦る
これは、「お風呂」を意味しています。
それぞれの方が、さまざまな表現をされます。
グーで体を擦って、体を洗うという意味合いを示すのが一般的ですが、肩のあたりを擦る人、ほっぺを擦る人、また、シャンプーのように頭を洗う動きで表現する人、背中を洗う人もいます。
両手をあごにつけるのは、湯船につかる動き。シャワーを表現する人もいます。
アナタも、日本語1つに、手話の表現は「1つ」と思わずに、同じ意味を表すにも、さまざまな表現があることを覚えて下さいね。
これから、ろう者高齢者施設も、だんだん増えて来ると思います。手話の重要性・必要性を感じます。歳をとって、自分達の言葉である手話が、通じなければ、とても寂しい思いをします。生涯手話で周りの人と仲良くつながり合っていけることは、大事なことだと思います。
南も、日本語で暮らしていますが、歳をとって外国の施設に入るようなことがあり、周りに日本語の通じる人が誰もいなくなれば、閉じ込められたような気持ちになると思います。
ろうの人には手話。私には日本語。母語は生涯にわたって大事なものなのだと思います。
各地に広がる高齢者施設でも、手話が大事にされ、みんなが支え合っていければいいなあと思います。
また、お会いしましょう。
さようなら〜〜〜〜〜!!
提供:手話あいらんど手話教室
出演:いくみ&南 瑠霞
構成:南 瑠霞
編集:青木 孝二