東京工業大学 未来の人類研究センター 利他研究の対話に参加!!

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10月のとある1日、東京工業大学 利他プロジェクト〜未来の人類研究センターのディスカッションに参加させていただきました。
東工大リベラルアーツ研究教育院(ILA)の、ヒュー・ディフェランティ教授の案内で、ご縁があり、ショートレクチャーをさせていただいたのです。

キャンパスでは、対面とオンラインによるハイブリッド方式で、みなさんとつないでいただき、およそ2時間の対話が実現しました。
各分野の専門家の皆さんとの語らいに、目が開かれる思いでした。

東工大の利他プロジェクト〜未来の人類研究センターは、伊藤亜紗教授をセンター長とする、今の時代にさまざまな試考を提言していく、専門家集団。
イタリア語やフランス語に熟達した比較文学の研究者、映像文化を手がけるエキスパート、科学の歴史、日本の音楽文化、ロシア文化や美術、宇宙関連の専門家など、本当にさまざまな方が、プロジェクトに参加されています。
利己的な追求に終始しがちな現代に、他者との関係を見る「利他」の視点や重要性を、共に考えていこうという研究会です。

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今回は、この会に参加させていただくということで、私の大事な願いを叶えていただきました。
ズームを利用した、複雑な画面構成の中で、私のトークをどう進めるか、事前に何度も相談させていただいたのですが、「専門家の皆さんだからこそ、生の手話のあり方を!!」とお伝えし、前半の1時間を、声なしのレクチャーにさせていただいたのです。

手話は耳や音声を使わなくても成り立っている言語であること。そして、世界には聞こえない人がたくさんおり、その方達が視覚言語をどのような視点で捉えているのかを、そのまま体感していただけるのではないかと思ったからです。

これは、日頃、私が授業をお預かりしている短大などでおこなっている、音声を使わない講義そのもの。板書と身振りと手話によるトークだけで内容を伝えていくという、方式です。

最初は、恐る恐る始めたレクチャーでしたが、1時間後には、私も意外に自由に、気を遣わず手話でお話ができるようになり、それが、みなさんに伝わっているという実感が湧いてきました。

皆さんには、オンラインという環境で、丸々1時間、日頃あまりない『音声なしの情報』を受け取っていただいたきました。

にも関わらず!!
終了後、感想やご質問をいただく中で、的を射た、数々のご意見をいただき、「よっしゃ、伝わった。前半の1時間は無駄じゃなかった。生きている!!」と、自分の中でも、嬉しい気持ちが、弾けるのがわかりました!!研究者のみなさんは、パソコンのウインドウから、音声なしのプレゼンを、しっかりと受け止めてくださっていたのです!!喜!!

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「手話言語は、語順でなく、『空間における語の位置』。同じ単語を並べても、その位置関係と、動かす向きで、目的語などが決まり、真逆の意味も示せる。」と、説明をさせていただくと、
「ならば、音声言語のように、時系列に順番に語を並べるルールから解き放たれるので『同時に複数の表現が成り立つのではないか?』」などの質問も飛び出し、驚きました。これは、わたしたちがよく聞く「手話の同時性」の特徴についての質問だったのです。

たった1時間のレクチャーと、少しばかりの説明で、手話の真髄にぐんぐん迫って来てくださる皆さんに、ワクワクドキドキが止まりませんでした。

伊藤教授からは、自身が研究テーマとする「利他」という言葉についての、手話的意味についての質問もありました。
つい先日、同様の講座で手話通訳がついたとき、通訳者の方が、「『利他』という言葉は、手話における一般的発想の中で、馴染みのある表現ではなく、ズバリ一言で定義することは、難しい。」と、意見をもらったばかりだったのだそうです。

私たちも、手話通訳の現場で、同じように、一言で、物事の定義を示すことが難しい案件に、たびたび、ぶつかります。
IT企業などでは、カタカナ言葉が並び、それが、商品名なのか、プロジェクト名なのか、はたまた作業工程の中の専門用語なのか、その場では全く判断がつきかねる用語も次々飛び出します。
そうした際には、事前に、当事者と専門家、通訳者の3者で、意味やその言葉の持つ意義について、擦り合わせをする時間をもらっています。
一つの言葉の持つ背景や意味合いを、互いにシェアすることで、単語や表現の意味が定まっていきます。言葉を意味づけして、ラベルをつけていく作業にあたるのかもしれません。
こうしたすり合わせ、情報や背景文化をシェアしていく作業は、異言語同士では、重要のように思われます。
これによって、互いが新たな共通単語、共通表現を持ち合わせることになり、コミュニケーションが円滑に豊かになっていくのです。

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今回は、異言語・異文化の専門家の皆さんと、一つの場を共有させていただき、日頃あまり触れることのない視点から、私自身や手話について振り返ることができました。
感動と興奮をいただいた2時間に、感謝でいっぱいです。

プレゼンに際し、間に立ち、その方法やズームの手配などさまざまな準備に協力してくださった、事務局の中原由貴さんにも、心から御礼申し上げます。
ありがとうございました。
(※東工大キャンパスのお写真も、中原さんが撮ってくださいました。ありがとうございます!!)

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東京工業大学 未来の人類研究センター