シャドーイング!!


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(いつもより夕暮れ時の写真です。短大の中庭に街灯が灯っています。まだ、大もみじの葉は、深い緑色をしています。)

今年の短大の授業は、私の本番やさまざまな仕事の都合で、変則的です。週に2回授業をさせていただくことも、何回かあります。申し訳ない!汗

でも、コロナが少し落ち着き、ワクチンを接種している人も7割を超えているので、ここ数年のようなオンラインはなく、全て対面授業でみんなの元気な顔を、見ながら授業が進んでいます。嬉しいですね。

今年の学年には、先週あたりから、あれ?なんだか手話がうまいな。と思う学生が、何人かいます。私が手話で言っていることがよく通じているし、うなづきや返事も、的確です。
授業が終わった後、「どこかで手話を学んでいるの?」と、尋ねてみると、みんな「いいえ。今この授業で初めて手話を習ってます。」と、これまた、手話で!答えるではないですか!

初心者向けの内容とはいえ、私の手話が結構読み取れて、さらに手話で返事ができるのに、「初めてです」っていうのって、不思議だなあ・・・思ったのですが、私は、今週嬉しいことに気づきました。

学生たちは、みんな、「授業のその場で!毎回、私から、手話をコピーしていた」のです。え?どういうこと?と思う方もいるかもしれません。

私の授業は声なしです。ただ、いつも、その代わり、伝えたい内容は、パワポで映し出して、文字でも表記しています。私は、毎回、それを文字だけで伝えず、手話にして(日本語の文章通りに表さず、意味を翻訳してネイティブに近い手話にして。)解説をつけて見てもらっています。
学生は、毎回それを見ているのですが、そこから意味を汲んで、手話を読み取れるようになっているようなのです。

学習の柱は、名前や挨拶など簡単な例文を覚えてもらうものですが、それに関連する付属情報や解説は、もちろん多量です。簡単すぎる手話では伝えられないので、毎回、文字情報が多めになります。ただ、それだけではもったいないので、私は、すべての日本語文に、自分が通訳する時と同じ手話で話して、学生たちに見せています。

私の手話は、元の日本語とは語順や表現方法が違っていますが、この内容が同じなんだ!と、学生たちにはすぐわかり、毎回スッと中身に入ってくれているようです。私はいちいちこの手話は、こう表現していますよ〜などという説明も、もちろんしていません。手話の技術でなく、中身をわかってもらえればいいので、手話が読めるかどうかは、問題ではないからです。
でも、それを毎回見ている学生たちの中で、ミラクルが起きたようです。

学生たちは、授業の課題例文の方でなく、私の解説に何度か出てきた単語や言い回しも覚え、手話を理解し始めていたのです。

授業が4回目となった、前回は、なんとその中の1人が、後ろの席で、ずっと1人で、私の手話をシャドーイングしていました。ほぼ100分の授業のほぼ全部!!驚!!
それも、なんとしても食らいついてやるぞ!と、必死に手話だけを見ているのでなく、まるで私とお話ししているように、意味を受け取りながら、手はその手話をシャドーイングしてくれていたのです。目があったその学生に、私はにっこり笑って「OK」のサインを出しました。とても上手に手話をしてくれていたからです。

実は、そのほかの、何人かの学生も、ところどころ、意識せず、自分でシャドーイングをしていることがあります。
どうやら、学生たちは、最初から、心の中でそんなふうに読み取って私の手話をコピーし、4週目にして、だんだん手が動くようになってきたもののようです。すごいですね。

どうりで、こりゃ上手くなるわ!

今までとちょっと違う学生の出現に、驚きつつも、嬉しく、また、下手な手話をするとそれもコピられてしまうと思えば、責任も重大だなあと感じながら、楽しく授業に臨ませてもらっています。

シャドーイングとは、内容がわかってもわからなくても、とりあえず相手の言語を追いかけて、真似をしてみるという、言語学習方法の一つです。それによって、相手の話の呼吸がわかり、言語のリズムそのものが体感でき、語学の習得に大変役立つとされています。これは、手話だけに限らず、あらゆる言語で取り入れられている方法です。

私は、学生たちにシャドーイングというものがあるとも、やってみるといいよとも説明したことはありません。また、この学校のカリキュラム中では、今後する予定もありません。笑 
彼ら彼女らは、その手法を、自分たちの直感でやり始めたのです。
自然に学生たちがやり始めたことなので、そのまま、あるがまま、やってみてもらおうと思っています。飽きたらやめればいいし、授業の受け方は自由です。

毎年、個性の違う学生たちと出会うのも、こうやって指導者の立場でいればこその楽しみです。
今年も元気にいこう。感謝。