耳栓をして街を歩く
今週の学生たちは、グループで、耳栓をして、街を歩く体験をしました。
耳栓は、付けてもそれなりに結構音が聞こえる気がするのですが、それも静かに机に座っている時だけのこと。実際に、街に出てみると、意外にいろんな音や気配が消えてしまっていることに気づきます。危険にも注意を払いながら、地図に記された7つのポイントを回ってきてもらいます。
お互いが、聴こえないと言う条件を守るため、音声も禁止にして回るコースでは、みんなの相談も、今まで習った手話や筆談などで行うことになります。
地図のミッションをクリアしながら、およそ30分の道のりから、戻ってくると、学生たちは、ちょっと変わっています。
話がうまく伝えられないと、落ち葉が綺麗だなあと思っても、「まあいっか。」と、話さなくなるし、どんどん先に行ってしまった友達は、追いかけて走って呼びにいかなければいけません。
中には、突然追い越して行った自転車に驚いた学生もいたようです。
教室に戻って、耳栓を外すと、今まで聞こえなかったいろんな音が、一気に耳に飛び込んできます。
友達の服が擦れる音、ペンで字を書く音、風に葉が揺れる音、隣の公園の野球少年たちの声、ズバッというキャッチャーミットの音、鳥のさえずり、道路を行き交う車の音。。。
こうした音は、耳の聞こえにくい人には、キャッチしづらく、知らない音もあるかもしれません。
体験後は、グループでディスカッション。互いの気づきも話し合います。
聞こえる私たちは、たとえ見えていなくても、後ろの友達がセキばらいをしたら、喉の調子が悪いのかなと思ったり、ろう下や外の人の声から、男性か女性か、子供か大人か、少人数かそれなりに大勢いるか、また車が通れば、その音から、バイクか、乗用車か、大型車かなども、聞き分けたり、車が進んで行く方向まで感じられたりします。
でも、学生たちは、耳栓をすることで、「すごく目を使った」「視覚情報が頼りだった」「目と目をみかわすコミュニケーションに気づいた。」と、違った角度の気づきも教えてくれます。
中には、「なるほど、手話を覚えていれば、筆談より時間がかからない!メモもいらないから、便利だって分かった。」など、手話の良さを、実感する学生も。
聞こえることと、聞こえないことは、どちらが上でも下でも、どちらが優れているかでもなく、互いが「違う」のだと知ること。
それに気づけば、理解しあえる手がかりもつかめるかもしれません。
ささやかな体験を通して、違った見方があることも学びながら、学生たちの秋は、深まっています。
みんなが歩いたキャンパス周辺には、美しい紅葉や、冬の花も咲き始めています。
この体験は、年により、みぞれ混じりの雨の日や、冷たい風の日などもありますが、雨天決行。汗 雨の日なら、傘をさした時の、話し方などもみんなが工夫したり、寒い時は、凍えた手でどうやって手話をしようかと考えたり、みんなが力を合わせて、地図をクリアして戻ってきてくれます。
今年の学生たちの体験は、青空。爽やかな1日でした。