手話の星見会 in 千葉県佐倉

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(2023年3月 和歌山県串本町 橋杭岩と満月)

本州最南端の町、和歌山県串本町。
串本ふるさと大使です。

串本町では、地球周辺 近宇宙に、人工衛星を輸送するロケットサービス、カイロス号が、この1〜2年のうちに打ち上げられるべく、準備が進んでいます。
射場を管理しているのは、キャノン電子や清水建設、IHIエアロスペースなどの出資で生まれたスペースワン株式会社。民間企業の射場からロケットが打ち上げられれば日本初。
本格稼働する射場としては、JAXAの種子島・内之浦、北海道の大樹町に次いで、全国で4番目となります。

これを機に、串本町のみんなで、宇宙や星空の勉強を始めました。
私も、その流れで、天文宇宙検定を受けたり、月の土地を買ったり(本当です!笑)、星空案内人の資格に挑戦したり、いろんな星の会に参加させてもらったりしています。

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(千葉県いすみ市 2023年7月 さそり座と南斗六星の見える星空)

ところで、聞こえない人の中には、コアな星ファンはいるものの、専門的に活動している人や、定期的な観望会を開いているグループなどが、少ないことをご存知でしょうか?

宇宙開発や天体についての手話も、JAXAや、日本天文教育普及研究会 天文手話検討ワーキンググループなどが、研究や提案を進めていますが、語彙数も少なく、一般化していないものがほとんどです。

実は、夜空の星は暗ければ暗いほど、よく見える。
でも、聞こえない人のコミュニケーション手段となる、手話や筆談は、明るさが必要!!
ここが、ネックとなり、聞こえない人向けの星見会や、星の手話がなかなか広がっていないのです。

子供達に人気のプラネタリウムも、基本、暗闇の中の星空と、音声解説。聞こえない子供達にとっては、映し出された星が見えても、誰が何を解説しているのか分からず、つまらないから、好きにはならなかった!という人が多くいます。

現在、聞こえない人たちの働きかけで、字幕付きのプラネタリウム作品も、全国で少しずつ出てきてはいますが、自分の身近な施設で必ずしも常に字幕投影が行われているわけではありません。

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(南が時々行く、渋谷のプラネタリウム。解説員の中には、世界100以上のプラネタリウムを巡った方、自作の切り絵などを投影して観る人を楽しませてくれる方など、個性あふれるメンバーがいっぱい。)

多くの聞こえる大人の星空ファンは、子供の頃プラネタリウムや、実際の星空を見て、その感動から、星の虜になった人もたくさんいます。

一方、星の話題に触れる機会の少なかった、かつての聞こえない子供達は、大人になった現在も、聞こえない人同士で集って、夜空を見上げる趣味には傾きづらく、その結果、耳の聞こえないコアな星空オタクは少数。聞こえない人の間で、詳細な星の話題が交わされることも少なく、また話したくても周りに同じ趣味の人が見つかりにくい。。。そんなわけで、星空にまつわる手話はまだまとまっておらず、言葉数も少ない・・・というのが実情のようです。

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(北総星見隊。みんなが、星空に向かって「見る」の手話を表現しているところ!)

さて、そんな聞こえない人と、星空を共有したいと、悩みを打ちあけたら!!
千葉県佐倉市などを中心に活動する「北総星見隊」の皆さんが、「手話の星見会」を企画してくださいました!!

代表の喜多伸介さんが、佐倉市の手話サークルに話を持ちかけてくださり、8月27日、地元のコミュニティセンターと近くの公園で、聞こえないみなさんや、手話関係者の皆さんと共に、観望会をすることが出来ました!!!!!!!喜!!
本当にありがとうございます!!

こうした観望会をしたいと言う聞こえない方の声も、最近あちこちで、聞くようになったので、一旦、うまくできたこと、できなかったことなどなど、メモしておきたいと思います。

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(代表の喜多さん(水色のTシャツの方)が、準備されたパワポには、文字もたくさん入れてくださいました。南も解説の手話通訳)

【今回の事前準備】
★星空の予習のため、会議室をお借りした!

○ 実際、外に出る前に、明るい会議室で、通常の観望会よりたくさん星空の情報を共有して、準備をしてから、星を見る。
○ 聞こえる解説者の話を手話通訳し、聞こえない人の手話でのお話も読み取り通訳をすることになるので、その分時間が必要になるだろうから、それも考慮して、事前解説の時間を多めに取る。
○ 初心者にとって、雨や曇りで企画が中止になると、せっかくいろんなスケジュールを調整して、参加しようとした分、心が折れ、次にまた集まろうという気持ちが下がるので、嵐などでない限り、雨天決行。外に出られなくても、室内で、いろんな星の話などをすることで、みんなで楽しめる企画にする。
○ 外では、懐中電灯にピンポン球を貼り、光を柔らかくしたものに、小さなおおいをつけ、マイクスタンドのようなものに、セットする。その下にいる人だけを明るくし、手話を見やすくしてみる。

ーーー以上の4点に、チャレンジしました。

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(ミニチュアを使って、地球と月の距離をイメージ。)

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(聞こえない方も、たくさんの質問をしてくださいました。)

やってみた結果
【屋内での通訳】
★ ある程度星の内容がわからないと、適切な通訳がしづらい。汗

○ 今回、聞こえない方から出た4つの質問の読み取りが、難しかった。
■ろうの方「新月の時は、世界中どこでも、新月ですか?」
ーーー「新月」って手話表現は、「新しい月」なのか?「月がない。真っ暗」なのか???聞こえない方も、私も、迷いながら話しました。
天体についての答えは、「新月の日は、世界のどこから見ても、一つの同じ新月。」

■ろうの方「地球・月・縦にビヨ〜ん(伸びる)・横にビヨ〜ん(伸びる)・波打ち際 ざぶーん!」
ーーーえ?何?と思ったら!
地元の手話通訳士の方が、「月の引力と、潮の満ち引きのことをおっしゃっています。」と教えてくださった!!汗

■ろうの方「日光・鳥居・北極星・(空が)ぐるぐる〜」
ーーーえ?何?と思ったら!
今度は、解説の喜多さんが、「日光ですね。そうです。日光東照宮陽明門は、中央真上に北極星がくるように建てられています。東照宮は北を向いて礼拝します。そこを中心に北の空の星がぐるっと回っているのがわかります。」と、こともなげに説明。。。大汗

■ろうの方「月がいつ新月で、いつ満月か。カレンダー。世界のカレンダーで、それがわかるのか?カレンダーについて、教えてください。」
ーーー手話は、単語の羅列で読めたけど、何これ?と思ったら!
また喜多さんが!「月の満ち欠けがわかるのは、昔の日本の暦ですね。昔の日本の太陰暦は、月が基準だったので、カレンダーを見るだけで、1日が新月。15日が満月。とわかりました。でも、今、日本で使われているのは、キリストの誕生を基準とした太陽暦で、太陽の動きを元にしたカレンダーです。ですから、このカレンダーからは、月の満ち欠けは分かりません。現代のカレンダーの場合、月の満ち欠けは、しっかり調べないと、日付からでは導き出せなくなっているんですね。」・・・あ、ああ、なるほど。そういう質問だったの???
まだ、チンプンカンプンだった私は、あえて改めて、聞こえない方に聞いてみた。
「あの。。この喜多さんの答えで、質問の意味は合ってますか?」
すると、ろうの方ご本人も「はい、そうです。」とキッパリ。
そうか・・・そうだったのか〜〜〜〜〜〜!そういう質問だったのかーー!!

・・と、とにかく、たくさんのことを感じながら、通訳させていただきました。大汗

通訳とは、背景や意味がつかめなければ、適切にはなしえない。そんなんだったら、手話に関係なく、尋ねたい人と答えをしっかり持っている人同士が直接話した方がよっぽど通じる!
のルールは、ここでも健在であった。。。

屋内の、事前学習で、参加された方が、大変楽しんでくださったことは、溢れるほど伝わってきたが、一番勉強になったのは、私だったかもしれないと、絶句のひととき。汗汗汗

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(スタンドにセットされた灯りの下で、手話通訳。)

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(「指を全部開いたら、だいたい20度。」)

【屋外での灯り】
○ 公園などでは、周辺街灯や、多少の街明かりがあれば、夜でも、ある程度、手話で話せ、コミュニケーションは、なんとかなることがわかった。全てが薄暗いので、目が慣れてくるのだ。(この日は月があったことも、明るさを助けたか?)

○ ただし、話す相手の後ろに、街灯などがあると、眩しくて、その人の顔が見えず、手話も読み取りづらい。これは意外に苦労した。

○ ピンポン玉をセットした灯りについては、
・ 確かに読み取る人には見やすいが、光の下にいる人は、その明るさで、星空が見えない。だから、星の位置を指さしたりするのが意外に難しかった。
・ 灯りが、スタンドにセットされているので、望遠鏡の場所や星空の向きなどに合わせて、誰かが持ち歩かなければならない。笑
→ 灯りについては、今後また、皆さんといろいろ相談してみたいと思います。星見隊のみなさん、本当にありがとうございます。

そんなこんなで、今回の収穫はこんな感じ。
ぜひ、手話の星見会をご検討の全国の皆さんは、参考にされてみてください。
星ファンの聞こえる方と、星についてもっと知りたい聞こえない方が、グッと近づいた、素敵な交流会となったことは、本当に感動でした。

※ あ!ちなみに、まだまだ暑い今の時期は、虫除けスプレーも忘れずに!!

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(「あれあれ!あれが、夏の大三角!」)

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(空に浮かぶ月の様子を、みんなが順番に、のぞいているところ)

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(南の小さな望遠鏡でも、月の姿がくっきりと見えました。皆さんに見ていただいて、感激!!)

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(手話で話す私たちの向こうには、雲の間から北斗七星ものぞきました!)

この企画をやらせていただいた、北総星見隊の皆さんに心から感謝です。
ありがとうございました。

★北総星見隊
(千葉県北総地域の天文サークル)
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(みんなで記念写真!)

※ 写真は、北総星見隊 喜多伸介&菊池律子さん。本当にありがとうございました。



南 瑠霞(みなみ・るるか)
手話通訳士600
星空案内人(星のソムリエ®️準)
天文宇宙検定4級(星空博士ジュニア)