声で話して手話通訳をつけてもらう!

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先日、都内江戸川区で、手話ドラマにまつわる講演をさせていただきました。
内容は、もちろん、私が参加させていただいてきた、さまざまなドラマの、手話指導のお話です。
みなさんがのぞくことのない、撮影現場の話は、手話以外にも、面白いことがいっぱい。各地の皆さんに、その裏側をご紹介しています。

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今回、実は、この講演で!!!!!!!!
生まれて初めて、手話通訳をつけてもらって、お話をしました!!

江戸川区では、音声と共に手話をすることで、手話が抜け落ちたり、日本手話のリズムが壊れ、ろうの方に伝わりづらくなることを避けるため、区内の通訳者などでも、プレゼンや発表の時は「手話をして、読み取ってもらう」か、「音声で話して、手話通訳をしてもらう」か、このどちらかを選ぶのだそうです。

事前にいろいろご相談した結果、いったん、私が声で話し、手話通訳をつけて見てもらおうということになりました。

私が、音声付きで手話で話したとしても、通常、手話にあてた日本語をつけて話すことになるので、よく「日本語がおかしい」と言われます。笑
「あの人は聞こえる」を「んーは、あーあー」。「あの人は、ろうの人」を「あーは、んー」と言ったり、過去形の動詞を「パ」と言ったりするので、結局、日本語だけを頼ると、聞こえる人には、何を言っているか、わかりづらくなってしまうこともあります。笑 

一番クレームが多いのは、要約筆記通訳の方から。「急に、あーとか、パーとかいうので、そこの日本語がなんだったのか、聞いているだけではわからなくなり、文に起こせない」というものです。音声付きの手話で話した講演のあるあるですね。笑笑

また、私は、話が弾んできて、会場のろうの人と息が合ってくると、結局、日本語のニュアンスでは伝えられない場面では、手話だけで話してしまい、声が頼りにならなくなります。笑

私は、通常、人前でプレゼンしたり、お話ししたりするとき、「手話に近い、日本語」で話しているのです。「音声に合わせた手話=音声対応手話(日本語対応手話)」でなく、「手話に合わせた日本語(手話対応日本語)」ですね。笑
私は、声と手話で話す場合、手話の文法を壊さず、手話に当てた日本語音声をつけることが、ろうの人にも、聞こえる人にも伝わる良い方法だと思っているのです。
でも、これでは、本来の良き日本語を聞こうとすると、ちょっと違和感のあるものになってしまいます。笑

今回は、江戸川区の方針を受け、試しに!生まれて初めて。自分で声だけで話すとどうなるのか、チャレンジしてみよう!と思いました。

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でも、こうなると、講演中、多くの人の目が、手話通訳によってしまい、私と目が会う人が明らかに減ってしまいます。声で話す私が、会場の人たちと一体になるのには、どうすべきか?
それをちょっと考えてみました。

多くの場合、私は、通訳をする側ですが、その時、気をつけているのは、「お話しされているご本人と息を合わせる」こと。これによって、話者と通訳者の一体感が生まれ、ご本人が声で話す姿と、手話で通訳した話の内容が、一つになって届けられ、見る人、聞く人が、自然にお話を見ることができます。

私たちは、通訳者が、頑張って一生懸命通訳している姿でなく、お話しされるご本人のお話のリズムを壊すことなく、そちらに目を向けてもらって、内容を伝えることが求められているのです。
その逆を、話す側からもチャレンジすれば、通訳者と一体感が出るはず。と思ったのです。

○通訳の方にできるだけ私に引っ付いてもらって、話す時の私のリズム感や呼吸の間が、感じられる近い位置に立ってもらう。それによって、互いの体の揺らぎが、合ってくるはず。
○通訳の方が、できるだけ、話し初めと同時に文末を予測できるよう、文節ごとに区切って、意味の流れを作る。(通訳者は、文全体の流れを聞いて、まとめているので、無意味に区切ったり、わざわざ通訳者が通訳を終えるのを、待ったりしない。)
○音声と手話が、文法やまとめ方の違いで、通訳時間が伸びてしまった場合は、待つ。
○通訳の内容に、私もうなづく。(嫌味になってはいけない。笑 あくまで自然なタイミングで。)
○また、ところどころ、重要な部分では、私も通訳者と一緒に、リズムを合わせて、アクションをつけ、両者が同時に同じ意味を表していることを見てもらう。

こんな工夫をしてみました。

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今回、この方法で、ろうの方も、私といっぱい目を合わせてくださったり、ろうの方のうなづきなども、確認できて、想像したより、楽しくお話しすることができました。

来てくださった通訳の方も、とても素晴らしいお二人で、私のリズムに、合わしてくださって、一緒に楽しく伝えてくださいました。
話者と呼吸が合わせられるかどうかは、通訳では、重要なことの一つなのだなあと、改めて、感じました。
本当に、ありがとうございました。

日頃通訳をする時、お話しされる方が、こちらの呼吸を汲んでくださっているかどうかは、通訳者の側からもわかります。通訳がよくできたなと感じる講演では、実は、話者と通訳者は、互いに呼吸を読み合っているのです。

通訳は、話者との共同作業。通訳者だけが頑張っても、良き方向には持っていきづらいものです。
互いが一つの話をするという思いがあれば、そのお話は通訳を通じて何倍にもなって、聞こえない人に届くのだと思います。
本当に、素敵な体験をさせていただきました。
ありがとうございました。

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会場となったビルからは、こんな素敵な都内の風景が見えていました。