手話の読み取りの壁をこえる!〜全てのラベルを書き起こす

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4月20日(土)
集中手話講座「読み取りの壁を超える」を、行いました。
楽しく授業に参加していただいた皆さん、本当にありがとうございます。

読み取りが苦手だと言う壁にぶつかっておられるのは、ある程度手話学習が進んだ皆さんです。
結構、手話を学んだのに、自然なろうの人の手話を読み取ろうとしたら全然わからなかった。今まで何をしてきたのだろう。と思う方。
また、手話経験が増えてきて、通訳をする機会が増えたら、表現はある程度できるのに、読み取りがさんざんだ。と言う方もおられます。
思い当たる方は、いらっしゃいますか?

また、手話通訳者になるべく、地域の登録を目指したり、統一試験を受けたり、また、その先の厚生労働大臣公認資格である手話通訳士を目指したりすれば、ろう者のネイティブな手話の読み取りは必須となり、攻略できなければ、目標が達成できません。

ろう者と話せればいいんだから、下手くそでいいし、通じればいい。通訳なんて目指してない。という人でさえ、ぽろっと話した、ろう者のくだらない一言がわからなければ、置いてけぼりを食ってしまうこともあるだろうし、笑いは、後から意味を教えてもらっても、ああそうか。と思うだけで、笑いのツボは、もう逃しています。。。

読み取りができるようになると、とにかく手話は、楽しい!のであり、手話は、せっかく習うなら、うまくなって悪いもんじゃない。学んだ言葉で、相手と笑い合えれば、それはとても素敵なことです。

そんなわけで、第二言語として手話を学ぶとき、もっと読み取りの良き勉強方法があればいいなあと思う皆さんに、楽しみながら学んでいただける内容を、ご紹介しているのが、南 瑠霞の読み取り講座です。

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(皆さんの、悩みを聞くところから、講座はスタート)

「どうして手話が読み取れないのか?」
その理由と段階は、大きく分けて、4つあります。

①根本的に手話が読み取れていない。
②わかっているはずなのに、手話が早くて読み取れない。簡単な手話しか並んでいないのに、全くもって意味がわからない。
③読み取れるし、手話で返事もできるが、それを日本語にしようとすると、全く言葉が出てこない。
④手話で話す人の立場や言葉遣いを反映させるための、適切な日本語が、構築できない。

ろうの人と友達になれればいいし、通訳は目指さない。と言う人も含め、もっとろうの人の手話をしっかり読み取りたい、全ての方に共通するのが、①と②。ここは、手話の読み取りの基本です。

③と④は、通訳者となるべく勉強をするとき、ぜひ、検討したい課題です。

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(読み取りの考え方も、伝授)

【出回っている映像を使わせてもらう】
第2言語として、手話なり英語なりを学ぶ際、通常の赤ちゃんや子供と同じ習い方はなかなか難しいものです。ぼんやりしていても、母親がつきっきりで、何かを話しかけてくれ、食べものやトイレのそそうも許され、何かにつけ注意してくれたり、褒めてくれたり、行動も含め正してくれたり、こんな時は失礼のないようこう言いましょうなどと、折に触れ教えてもらえたりするのは、その国にいて家族がいて、そして自分が子供でいる時代だけの特権です。笑

大人になって、話したいと思っても、しつこく「何?」「何?」と繰り返せば、相手の話の腰を折り、貴重な時間を面倒な指導に使わせることになってしまいます。

そんな時、便利なのが、DVDやネットに出回っている良き日本手話映像です。
今時は、手話学習者のための、各地で販売されているDVDや、ろうの表現者が語るネット上の日本手話も、たくさんあります。そういった手話を自分で見つけて、言葉を教えてくれる親代わりにすればよいのです。笑

こうした映像は、昔のビデオテープと違って、何回見てもすり減ったり、切れてしまったりすることはありません。笑 何千回でも、何万回でも、私たちが見たいと言えば、早朝でも深夜でも、嫌な顔ひとつせず、穏やかに、かつにこやかに、付き合ってくれます。
家庭によって、話す話題が違うように、そうした手話もさまざまな内容を語っています。でも、そこに使われている、手話単語や言い回しは、共通です。どんな映像からでも、学べることはいろいろあります。
それをありがたく読み取らせて貰えば、私たちの学習は、成り立ちます。

第二言語だからこそ、こうやって、良き映像をたくさん使わせてもらいましょう。

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(読み取りの手順も考えて)

【ラベルを書き出す】
さて、その映像は、何回読んでもよいというありがたい条件付きですので、ここからが、勉強です。

①根本的に手話が読み取れていない。
②わかっているはずなのに、手話が早くて読み取れない。簡単な手話しか並んでいないのに、全くもって意味がわからない。
に、課題のある人も、③④の日本語の構築に戸惑っている方も、
まずは、ただただ、楽しくその映像を見てみましょう。

読み取りたい映像を見つけたら、まずは、とりあえず、自分で読み取ってみてください。
この時、あまりに難しすぎたら、別の簡単そうなものを選び直すのも、嫌にならないコツの一つです。

そして、いよいよ、これにしようと決まったら!

その映像を、まずは、1〜2回見てみてみましょう。そして、読み取れる!と思っても、全て、見えてくる単語を一つずつ書き出していきます。
これを、ラベル(単語の名前)起こしと言います。

「私・友達・いる・名前・佐藤・彼の方を指さし・うなづき・趣味・何?・釣り・指さし・・・・」といった具合に、手話の単語の名前にあたるラベルを書き出していきます。この時、うなずきや首振り、人差し指の動きなども大切ですので、順番に全て書き起こします。

ラベル起こしの時は、スローにしても、手でゆっくり進めても構いません。とにかく、全部手話を書き起こすことが、大切です。
すると、多くの場合、「私って、こんなに手話を見落としてたんだ」「手話が見えていなかったんだ」と気づくことになります。

ろう者のナチュラルな手話は、スピードが早く、その間に、いろんな表現をしているからです。

この際、意味不明の単語も、(   )にして、空欄にしておけば、自分がどれくらい、何がわかっていないかが、明確になります。

一見さっぱり読み取れなかった映像でも、ゆっくりラベル起こしをして、8〜9割解読できれば、全体の流れや意味合いはわかってきます。(   )で空いてしまった部分を深追いする必要はありません。そこに手話があることが見られればよいのです。

最初はたくさん見落として、全く分からなかった映像も、実はよく知っている単語のことが多く、何度も見直せば、どんどん目に入ってくるようになり、内容がつながってくるのがわかると思います。
読み取りが苦手だなあと思うアナタは、ぜひ、これをやって見てください

まあ、でも、これ以上勉強をするっていうのは面倒だなあ・・・という方は、ここで終了しても大丈夫!!笑
この作業さえできれば、相当手話が見えてきます!!
これだけで、かなり手話を見る目が育つのです。

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(読み取った手話を、どう日本語にする? 一人一人と相談しながら)

【日本語の構築】
この後、さらにやる気のある人は、(   )になって読めなかった不明部分が、本当はどんな手話でどんな意味なのかの解明。
全てのラベルが起こせたら、③間違いのない適切な日本語で、文末までしっかり声にする。これで、大抵の、試験は合格します。

④ここからさらに現場で生かせるようにするには、話し手が上品そうな雰囲気なら上品な日本語。楽しそうなら、声も明るく。結構フランクに話しているなら「ですます調」は避けるなど、工夫してさらに良き日本語を構築する作業までやってみましょう。

【何度も繰り返す!!】
そして、これらの作業の、とても大事なこと!!
それは、例文が分かったところで、勉強をおしまいにしないこと!!

通訳者を目指すアナタは、ぜひ、同じ例文を、つっかえることなく、うまく日本語で話せる(読み取れる)ようになるまで、何度も何度も、練習してください。

多くの手話学習の場では、みんなで、ろう者の手話の解読までして、「これで、内容がわかりましたね。」と、終わりにしていることが多いように思います。でも、実は、この先が大切です。

「習った手話は、自分のペースで、何度も何度も見返し、声に出してしっかり読み取る!!」
とにかく、何度も、本番通りできるようになるまで!です。
そこに、多くのヒントが隠されています。

さて、私の講座は、ここまでが授業の半分。
この後、絶対に手話がうまくなる方法も、しっかり皆さんにお伝えしています。
残りの半分は、ぜひ、アナタも会場で!

ご参加された皆さん、楽しい時間を本当にありがとうございました。ぜひ、授業をヒントに、いろいろチャレンジしてください。
感謝。

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(皆さんの質問にも答えながら)


※ 写真は、助っ人の愛ちゃんが撮ってくれました。ありがとう!