設定が命!「手話の歌の作り方!!」

4月、都内手話サークルに呼んでいただき、手話の歌のワークショップを開催させていただきました。
皆さんが、楽しくご参加くださって、ディスカッションもめちゃくちゃ盛り上がった講座でした。ありがとうございます。

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ところで、多くのあなたは、手話の歌を作る時、歌詞をどうやって訳そうか、どんな表現にしよう・・・と悩まれると思います。

でも、どんな手話にするかは、ただ日本語の歌詞を手話に置き換えようとするだけでは、うまくいかない場合がほとんどです。表情をどうつけるの?全体の動きは?と考えても、なかなかいい案が浮かばないし、どうすればいいの??
そんなふうに悩んておられるサークルの皆さんも、多いと思います。

手話の歌について、聞こえない人が、どう感じているのか? とか、どんなことに気をつけなければいけないの?とか、そう言ったことについては、重要な要素ですので、ワークショップでも一番最初に、ガチ真剣に取り扱っていますが、このブログの別の投稿にも、いろいろ書かせてもらっているので、今日は省略。

今回は、ワークショップでみなさんに、体験していただいた中から、一つだけ、参考にしていただきたいポイントをご紹介します。

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歌詞の手話のほか、歌の持つ、背景や設定を、みんなでていねいにディスカッションしよう!!

【みんなで設定を考えると楽しい】
例えば、「見上げてごらん夜の星を」を、考えてみましょう。

この歌の手話を、ええと・・・「星・星」「見上げる」と、考えたとして、それを、ただ前に向いて表現するだけでは、どう表情を作っていいのか、なぜこの手話を表現するのか、自分たちにとっても、意味がまだまだ曖昧です。
設定がしっかりして、「誰が」「どこで」「誰に向かって」歌うのか、などを整理すると、手話表現が生きてきます。

皆さんに、考えてもらうと。。。
「海辺で、恋人同士?」「いや、キャンプ場がいい。」「山の上」「川べりかも」「家のベランダで、親が子供に話している場面もイケる。」「ただの道ならどうなる?」などなど、いろんな意見が出てきました。

じゃあ、だとしたら、手話を表現するときはどんな態勢?
「敷物を敷いて、寝そべって星を見てるかも?」「草原に座って膝を抱えてるかもね」「海辺なら波が来るかも」「家の窓から覗く?」などなど・・・
これも、様々なモノの見方が出てきます。

みんなで作った手話の歌詞も、どこを見てどう表現するか、これが整うと命が吹き込まれます。
今まで、みんなの手話に、なかなかいい表情がつけられなかったのは、下手だからじゃなくて、この設定が足りなかったからかも?

そんなわけで、やっていただいたのがこれ。

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奥の二人が、表現してくださっています。

「家のベランダから見た夜空」「親が子供に話しかける」という設定を決めていただき、こうなりました。ベランダの手すりの代わりに、机を立てています。

なんと!こうやれば、ただ人前に立って表現するだけの時より、自然に表情も湧いてきます。「見上げる」と言う手話も、意識を空に向けて、視線を示していますが、二人は、目を見交わしているではありませんか!!

そうそう、これが、ナチュラルな目線と表現。
お二人は、特訓をしたわけではなく、設定を決めただけで、こんなに豊かな情感を出してくださったのです!!感動。

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もう1チームは、「人を元気に励ます歌」にチャレンジして、この表現。

立っている方が、歌詞を声で伝えてくれています。
「場所は、家の中。娘の部屋」「大事な試合に負けた娘に、母親が声をかける」設定です。台に座っているのは、そこがベッドだからだそうです。娘役の方が握りしめているシャツは、毛布か何かの代わりのようです。

これも、設定を決めただけで、こうなりました。驚!!(しつこく、手取り足取り、私が指導をしたわけではありません!!笑)
娘役の方は、誰が演出したわけでもないのに、目元まで毛布を引き寄せて泣きそうな顔をしてくれました。手話をしている母親役の方も、手話の向きや表情が、当たり前ですが、ちゃんと、娘に話しかけるように表わされていますね。

手話の歌は、「設定を決める」ことで、グッと、そこに込められた意味も表情も、伝わる内容も深まります。
設定は、細かければ細かいほど、語る手話、歌う表現が広がっていくのです。これ、ぜひ、あなたのサークルでもチャレンジしてみてください。

手話も日本語も、言葉は、設定や背景・感情と共にあり、その言語だけで存在しているのではないと、感じられる学びでした。

このほか、ワークショップでは、前奏・間奏なども、簡単で内容が楽しく表現できるアイディアを拾ってみたり、皆さんで、とにかくいっぱい話し合った2時間となりました。
ちょっとしたことで、皆さんの表現がどんどん変わる様子を、一緒に体験させていただき、心から感謝です。
本当にありがとうございました。

※写真は、手話サークルの方が撮ってくださいました。感謝。