気を付けよう。手話の歌!!
「みんなが歌っている手話が、間違いだらけで見る気になれない。なぜ、これを見て、聞こえない人が楽しいと思うのか。」
短大での授業も、どんどん進んでいます。
手話の名前、住所、指文字などのほか、私の授業では、「手話の歌」を真剣に取り扱います。
私たちの調べでは、耳の聞こえない人のうち、歌に手話が付いたものを「好き」「やってみたい。」という人は、約半数。
残りの半分の人は、「興味がない。すきではない」と意志表示しています。
手話の歌を好きではないという人の理由は、「聴いたことのない音楽を、無理に理解しろと言わないでほしい。」「みんなが歌っている手話が、間違いだらけで見る気になれない。なぜ、これを見て、聞こえない人が楽しいと思うのか。」という厳しい意見を寄せています。
間違いだらけの手話・・・
日頃よく見る、ティックトックやInstagram、YouTubeの手話の歌の動画なども、肌感覚で言えば、目に飛び込むものの9割以上で意味の通じない手話が当てられており、手話を母語として使う人たちにとっては、かなり失礼なものを観せられているとしか言いようがありません。
この実情は、私たち手話を扱う指導者・先輩などの立場からは、多くの方々にしっかりと伝えていかなければいけない大きな課題の一つです。
手話の歌は、日本語の歌詞の単語を、一つずつ手話単語に置き換えれば、意味が成り立つと思い込んでいる人も多いかもしれませんが、次の例を見てみて下さい。
「みんなが歌う~♪」
「みんなで歌う~♪」
「みんなに歌う~♪」
この歌詞、あなたなら、どう手話にするでしょうか?
「みんな」と「歌う」という手話だけを表しても、これら3つ意味の違いは、伝えられません。
一方、これを英語にしてみると、どうでしょうか?
英語は、私たちの中の多くが、最低でも中学・高校で6年程度。現代の子供たちなら小学生時代からでしょうから、おそらく7~8年以上は学習経験があるはずです。
さあ、どうですか?
上の手話の方法から考えれば、英語の単語を置き換えればいいだけかもしれないし、経験の長い私達なら、すぐに、この三つの文を、英語にすることができるはずです。笑
でも、私も含め多くの人が、「え?むずかしい。どうしよう・・・てか。まるでわからない・・・」という感覚になるのではないでしょうか?
英語には、英語の独特の言い回しもあるし、文法もあるから、そう簡単にはいかない!と、私たちは、誰でも知っているからです。
では、私たちは、なぜ、「手話ならできそうな感じ」がするのでしょう?
それは、「手話は日本語とは違う言葉のルールを持ち、言い回しなども考える必要があるし、単語だけ置き換えても、意味をなさない。」つまり、「手話は言語であり、文法がある」ということを理解することを忘れ、「聞こえない人は、『日本語の代わりに』『簡単な手の合図』を送っているだけだ」と思っているからではないでしょうか?どうでしょうかね?
こう考えてみると、もしかしたら、私たちの中の何人かは、「英語」は言語だけど、「手話」は言語より簡単だ!と思い込んでいるのかもしれないし、英語は間違っちゃいけないけど、手話は間違ってもいいと思っているのかもしれない。
比べてみれば、私たちの多くが、やや手話を軽視し、聞こえない人に手話を付けてあげるのだから間違っていい。なんて、ちょっと思っている気配が、見えるような見えないような。。。汗
こうやって、多くの手話映像が、ネット上に送り込まれています。それは、本当に間違いのない手話?
だから、多くの聞こえない人たちは、「みんなが歌っている手話が、間違いだらけで見る気になれない。なぜ、これを見て、聞こえない人が楽しいと思うのか。」と、私たちに教えてくれているのです。
ここを学ぶのが、短大での手話の授業。
子供たちと、友情や出会いの場を育むために、いっしょに手話の歌に取り組みたい。そう思う保育士さんや園は、確実に増えています。
これは、とてもいいことだし、「手でも意味を伝えられる」って、すごくステキなこと。
これを大事にしていくためにも、「手話の歌のあり方」みんなで考えよう。
2024.10月 南 瑠霞