手話でどんな仕事がしたいのか?「日本手話〜手話を仕事にする」
手話でどんな仕事がしたいのか?「日本手話〜手話を仕事にする」
講座では、手話を仕事にしたい。手話が使える仕事がしたい。そう言った視点を持つ様々な人が、テーブルにつきました。
様々なディスカッションがなされましたので、ちょっと内容をご紹介しましょう。
【資格が求められる仕事】
手話の仕事に就きたい。
昨今そういう方が、増えてきました。では、どんな方が、どんな仕事をしているのでしょうか?
みなさんがテレビなどでよく見るのは、首相や官房長官の横に立つ手話通訳でしょうか?これを担当しているのは東京都の登録通訳者の皆さんです。
手話通訳は、各都道府県で状況が違います。
県単位で、それぞれ能力を認められた方々が登録され、各地で活躍しておられます。
県レベルの通訳は、全国手話統一試験合格者の方が登録されているケースが多いようです。都道府県の手話通訳者の皆さんは、都や府県の行政提供の情報番組の手話通訳として、テレビに出ておられる方もたくさんいらっしゃいます。
東京都の登録通訳は、その一歩先、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格を持った方が受験の条件となり、さらに都独自の筆記試験や、面接や実技試験を通過して、登録されます。実技試験では、中途失聴者・難聴者が求める音声対応手話と、ろう者の求める日本手話の両方が使いこなせなければ、合格点に到達しません。
このほか、テレビの政見放送の手話通訳は、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格保有者が、担当しています。
こう見ていくと、皆さんが見かける手話の仕事のほとんどは、手話通訳士、また統一試験の合格者が、担っているということができます。
東京・大阪などの都市部では、手話の仕事も多岐に渡り、手話通訳士の資格を持つ人が、フリーで活動されるケースもよくあります。
手話通訳士、統一試験合格の資格のある方は、様々な仕事に就ける可能性が広がりそうです。全て「手話」という専門性が求められる仕事であり、通訳のほか指導の仕事などにつく人もおられます。
行政や一般企業など、一般的な就職先としても、「手話のできる人」が募集されるケースがあります。
その場合も、多くは、手話通訳士・統一試験合格の資格を持つ人が求められます。手話言語条例なども広がり、行政の窓口で設置通訳を置く自治体も増えて来ました。企業の中に聞こえない人が雇用され、合わせて手話のできる人を募集するケースもあります。
この他、最近では、電話リレーサービス、遠隔手話通訳など、公共インフラとしての手話通訳を介した通信業務などもあり、そこでも、手話通訳士・統一試験合格者というのが、一般的な能力・資格の目安となっています。
私たちがよく出演させていただく、省庁や行政の情報映像などは、手話通訳士の資格のある人が指定され、さらに、現場では、監修・チェックを行うもう1人の手話通訳士(またはろう者の監修者)が必要です。こうした仕事も資格が求められる仕事となります。
今では、様々な高校・大学などでも、手話の講座を担当するろう者・手話通訳士の講師・教授も、大勢います。資格を持った方は、縁があれば、こうした仕事に、つける可能性もあるかもしれません。
手話の仕事に就くことを考える場合、手話通訳士や統一試験合格は、手話を知らない人にも技量がわかりやすく、裏付けもある資格と言えます。手話の仕事に憧れる方、目指す方には、大きな目標の一つと言えそうです。
※ お話が、ちょっと逆になりますが、各地にはもちろん、資格のないまま手話指導活動などをされている方もおられます。こうした方は、様々な環境や事情の中で、資格を持たず活動されているわけですが、私たちから見ても大変優秀な方がおられますので、安心してください。そうした方から学べば、あなたも良き手話に触れられます。
一方、しっかりと能力を確認しなければならない方もおられ、そうした人については、学ぶ側からも、見極めが必要です。
この人に学んで大丈夫かな?と不安に思った時は、直接その方に、お持ちの資格を尋ねてみるのも良いかもしれません。
また、手話の能力や倫理について裏付けがしっかりしているの団体は、全日本ろうあ連盟・日本手話通訳士協会・全国手話通訳問題研究会など。
そのほかで、協会という名前がついているものは、民間資格を作るために設けられた便宜上の組織の場合などもあるようです。
【資格だけでは成り立たない】
通訳士や統一試験合格の資格があっても、実は能力や、仕事に必要な判断が行えるスキルは、人によって大きく違います。
私、南 瑠霞自身、若い頃に、失敗したこともあります。
手話ができると得意になって通訳に行っても、内容が理解できず、なんら通訳の用をたさなかった(話の意味がつかめるような社会経験がなく、しっかりした通訳が行えない!汗)。通訳に行っても、聞こえない人の背景などを理解しておらず、たった一つの手話をそのままの形で読んだ(必要な状況の説明や補足をつけず、ただ単語だけを読んでしまった)ことで、相手に悪意に伝わってしまい、怒らせた(本当の意味が伝わらない、通訳の仕方をしてしまう!大汗)・・・など、手話ができるだけでは解決できない問題は、山のようにあります。
また、せっかく通訳に行っても、適切な位置に立てなければ、聞こえない人から見えず、情報が漏れてしまうなどなど・・・
資格を持っていると言っても、経験が少なかったり、適切な判断ができない場合は、適切に対応することができません。そんな時、不利益を被るのは聞こえない人です。
あなたも私も、資格に甘んじることなく、周りの多くの人の役に立てるよう、様々な勉強や経験を重ねたいですね。
「手話ができる」+「そのほかに何ができるのか?」は、「手話で仕事をする」には、重要な要素となってきそうです。
【手話の現場で働く人の声】
しっかりと手話を身につけた上で、聞こえない方とともに、手話で仕事をされている先輩方も、今回の講座に参加してくださいました。みんなで、仕事の状況をディスカッション。
○ 各地にろう高齢者施設も、少しずつ増えてきました。そう言った施設では、介護スタッフに、聞こえない人もたくさんいます。聞こえる人も手話ができれば、こうした職場で、聞こえない人と一緒に仕事をすることができます。
○ 手話通訳士の資格をとり、ケアマネージャーをしている人もいます。直接聞こえない方と触れ合いながら仕事をされています。
○ 地域の手話講習会などで育った方は、地元の区市町村の登録通訳者になったり、後進を育てるための指導者になっておられる方もいます。
○ 全国にある、都道府県聴覚障害者協会の事務所や、聴力障害者情報提供施設などで、団体職員等として働いている人もいます。
○ 最近は、手話の専門機関で学び、活躍するろう者の方の元で、身につけた手話を生かして通訳などとして活躍している人もいます。
○ スターバックスコーヒーなどのように、ろうの人や手話のできる人を、接客業で雇用したり、バイトを募集したりする店舗も増えてきました。こうした動きは全国にも広がっています。そのほか、ろう者が経営する居酒屋や、ラーメン屋さんなどで働く方法などもあるかもしれません。
このほか、手話あいらんどでは、手話教室の展開、手話の本の企画発行、ドラマや映画の手話指導や出演、手話舞台の企画プロデュース、舞台手話通訳、聾者の方が勤務する企業の研修や会議への通訳派遣なども行なっています。
こうした手話に重きを置いた仕事の場合、手話が卓越していることのほか、さらに聾者の義・手話の義に、心を寄せているかどうかも問われると思います。
悲しいことですが、手話・ろう者関連の事務所やお店を訪れる一般の方の中には、思い込みによる発言や、ろう者や手話の存在について、気づかずことを軽んじている方もおられます。そうした時、ろうの人と共に、問題にどう向き合うのか。社会の壁を越えていくにはどう行動すべきなのか。そこに丁寧に取り組んでいく気持ちがあるのかどうか。。。なども、重要になってくるように思います。
これが、少数派言語の抱える悩みであり、そこを見ずに、仕事を行うことはできないからです。
これから、手話の仕事に就きたいと思うあなたは、そのあたりも、イメージしてみてください。
※ 義(ぎ):社会的・人道的な正義。人間の行うべき筋道と道理。
【手話がまだまだだと、何もできないの?】
手話がまだまだだから、就ける仕事がないのか?
これも、いろんな発想で、自分の道を見つけることができます。
例えば、少しでも手話ができ、挨拶などが表現できることは、「自分たちの街に聞こえない人が暮らしていることを知っている」という意思表示になります。
ズバリろう学校の近所のコンビニやファミレス、ろう学校のある街の最寄り駅のコンビニやマックなどなら、聞こえない若者や、保護者などが集まる可能性もあり、いろんな出会いが見込めます。
こうした場所でアルバイトなどをすれば、あなたの手話を活かせるチャンスがあるかもしれません。
資格を取るまでではなくても、さらにもう少し手話ができれば、ろう者の介護施設や、ろう重複障害者施設、ろう者のグループホーム、作業所などに飛び込んで、働きながら聞こえない人と触れ合うこともできます。
手話を仕事にするということを考えるにあたっては、こういう視点もおすすめです。
今回初めて開催した「手話を仕事にする」。
いろんな角度から考察できたことは、今回の1日集中講座の中でも、ユニークであり、かつ、想像以上に意義深い時間となりました。
手話を通じて、何かできないかなと思っているあなたも、ぜひ、参考にしてください。
ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました。



